上司が"パーパス"語るほど従業員が不信感のなぜ 浸透しない理由は社内の情報伝達不足ではない

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つまり、組織が言葉通りに行動できるかどうかが重要なのだ。コンテキシスはパーパスを何も掲げていない企業と、パーパスを掲げてはいるが実行できていない企業を比較しており、ロスリング氏は以下のように述べている。

「私たちの調査でわかったのは、パーパスを宣言しただけではほとんど何も変わらないということです。そして、パーパスを宣言したうえでまったく反対のことをすればまずい事態になります。不信感やエンゲージメントの欠如を招くのです。

従業員にとって、財務業績だけを追求している企業はまだ許容できます。財務業績と同時に善も追求していればそのほうがよいのですが、それが無理なら収益だけを重視していればよいと考えます。

しかし、パーパスを果たすと約束しながら真逆の行動を取っている企業は、従業員に対して嘘をついていることになり、その瞬間に信用を失います。そして、彼らは自分自身の利害のためにしか行動しなくなるのです」

コンテキシスの調査では、掲げたパーパスを真に体現している企業では、よりイノベーションが促進されることも明らかになっている。その着火剤となるのが従業員とリーダーの強い信頼関係であり、そうした信頼関係は収益の向上にも結びついている。

「伝える」と「実現する」

コンテキシスのクライアントだったある金融企業では、パーパスに成果が伴わない理由を深く掘り下げていったところ、驚くような知見が得られた。

同社のリーダーたちは当初、パーパスが浸透しない問題は社内の情報伝達にあると考えていた。説得力のあるパーパス・ステートメントを掲げても、それが組織全体にきちんと行き届いていないために、従業員の理解不足を生んでいるのだと。

しかし「パーパスについて話せば話すほど、事態が悪化しているように思えて、同社のリーダーたちはひどく混乱していた」とロスリング氏は述べている。どうやら彼らは「パーパスについて話すこと」「パーパスを実現すること」の2つを同じように捉えていたらしい。

だから、リーダーたちがパーパスについて語るほど、従業員にとっては言葉と行動の乖離が浮き彫りとなって伝わるだけだったのだ。

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