「有給休暇が6週間」家族と一緒の時間が増えた オーストラリアに残る選択をした彼女のその後

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1つの病院で正社員になりながらも、2つ目の病院でも仕事を掛け持ちできる。こんなこともオーストラリアならでは、だろう。

永住権は、2021年に取得した。看護師は、オーストラリア政府が積極的に求めている人材。大学を卒業し、看護師になってすぐに取得できたという。

「その後の人生は間違いなく変わる」

「オーストラリアで看護師として働き始めて驚いたのは、有給休暇が1年に6週間もらえることです。シフト制で働いている人には、法律上、これだけの有休が保証されています。つい先日も6週間、日本で過ごしていたんです」

日本で看護師をしていたら、週末、何回、親に会えるか、という状況だったのだという。

「ずっと一緒に6週間、家族と楽しく過ごすことができるのは、とても大切だな、と改めて思っています」

病欠でも年に10日ほど休める。自身もそうだが、家族や子どもが具合が悪くなれば、給料を得ながら休める。しかも、働くのは週4日。これが看護師では、一般的だという。

そして今、オンラインで緩和ケアをテーマに大学院で学んでいる。

「ヨガやマインドフルネスにも興味があるので、そういったことも勉強中です。将来的に緩和ケアやセルフケアも含めて、心と体を大事にすることや、今を生きる、楽しむ大切さ、また自然の素晴らしさなどを多くの人に伝えていけたらと思っています」

オーストラリアに来てからは、将来のことをゆっくり考えたりする余裕や、学ぶ時間ができたと語る。

「ワーホリは、人生を豊かにできる時間をつくってくれました。仕事も辞めてきたので、本当に自分がやりたいことは何かを考えたり、視野を広げるきっかけになりました。30歳までに決断することで、その後の人生は間違いなく変わると思います」

実際、山本さんはワーホリをきっかけに人生を一変させることになった。海外で働くという夢も実現できた。

この原稿の事実確認をお願いしたとき、山本さんは休暇で1カ月のヨーロッパ旅行の最中だった。イタリア、南仏ニース、マルセイユを見て、パリからスイスに向かう列車の中からメール返信をくれた。

人生を大きく変えるチャンスは、誰にでもある。

上阪 徹 ブックライター

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うえさか とおる / Toru Uesaka

ブックライター。1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業。ワールド、リクルート・グループなどを経て、1994年、フリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍、Webメディアなどで幅広くインタビューや執筆を手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品は100冊以上。2014年より「上阪徹のブックライター塾」を開講している。著書は、『1分で心が震えるプロの言葉100』(東洋経済新報社)、『子どもが面白がる学校を創る』(日経BP)、『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)など多数。

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