それだけ近いとケンカになるかもしれないし、怒られるかもしれない。それでも、困ったときに、真っ先に思い出してくれる存在を目指すことが第一だ。
それを頭に入れて、実際に怪獣人間に接触してみよう。やり方を間違えると、頭から喰われて二度と立ち直れなくなるからよく読んでほしい。
怪獣人間に会うために手紙を書いたりメールをしたりする。その内容に正解はない。結局、相手がどういう人間が好きなのかを把握することだ。
見城徹さんが、角川書店時代に作家・五木寛之さんに25通の手紙を送り続けて口説き落とした話は有名だ。「手紙で自分の話を書くやつは終わっている、相手のことをどれだけ書けるかがすべてだ」と言っている。
見城さんに出版のお願いをするとき、僕も、その考え方を頭に入れて手紙を書いた。「見城さんの言葉でこういうところが刺激的です」とか「見城さんの本のこういうところが好きです」と。見城さんの人間性とか作品とか、やってきたこと、考え方についてとにかく書いた。
そこでは最低限、相手のことをちゃんと理解しようと努力している姿勢が伝わることが重要だ。
相手がいろいろな情報発信や表現活動をしているのは、自分なりの考え方を伝えたいからだろう。それなのに、見城さんへの手紙で、自分のことばかり書いていたら、「ホントにオレのことを好きなのか?」「オレの本を読んでるのか?」と思うだろう。
でも、「手紙には自分のことを書いてほしい」という人もいるかもしれない。大切なのは、相手がどのようなコミュニケーションを求めている人なのか調べ、考え尽くすことだ。
緊張しても言うべきことを言う
見城さんに初めて会ったときは、どう「断られる」かを想定して、いくつか対抗策を持っていった。
僕はそれまで本を1冊もつくったことがなく、誰にも知られていない編集者だった。デビュー戦が決勝戦。出版界の大怪獣。準備は徹底した。どの角度からボールが飛んできてもいいように。準備不足で立ち往生しないように。事前に頭の中で、何十回と会話をシミュレーションして臨んだ。
いきなり怒られるようなことはないはずだけれど、万が一ということもあるので、それも想定したし、「忙しいからダメ」は必ず言われそうだから、それにも答えを用意していった。
僕は本を出すことが目的だから、いつまでに、という期限は切らず「5年後」と言われたら「そのあいだ、ずっと近くに居られたら勉強になります。5年間取材させてください」と答えるつもりだった。
それだけの準備と心構えがあっても無理なら「いまはその資格がないことを受け止めて編集者として実績を積んで出直すだけ」という気持ちだった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら