「おっさん経営者」の鈍さがジャニーズ問題で露呈 日本取締役協会・冨山氏が説く「企業の責任」

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私の祖父や親はカナダ移民だったから、差別された話はいっぱい聞いている。一方で私自身は、大企業だけでなく地方の旅館で働いている人をリストラしなければならないという状況を経験してきた。世の中にどんな人生があるのかということは、嫌というほど見る経験をした。

文化、人種、年代と多様性を高めていかないと、センサーは敏感にならないし、社会全体の幸福度も高まらない。日本企業の同質性は、日本企業の競争力低下の原因だといわれている。今回の件はいろんな問題と根っこの部分でつながっている。

「知らなかった」という言い訳は通らない

――ジャニー喜多川氏の性加害問題をメディアや企業は長年対応しないまま放置してきました。改めて、このことをどう受け止めていますか。

企業が間接的に加担してきたことは事実で、性加害があったことを知らなかったという言い訳は通らない。そうとう重い過失がある。しかも、(ジャニーズに関する特集番組を報じた)イギリスのBBCから指摘を受け、ようやく問題意識を持った状態だ。芸能界に限らず、日本企業は現在の取引先を総点検するべきだろう。

日本取締役協会の緊急声明
9月公表の日本取締役協会の緊急声明。「かく言う私自身も北公次氏の告発本を読んだことがあり、週刊文春の記事を巡る判決も知っていたが、ことの重大性に関する危機意識が弱く」と、自省が述べられている。冨山氏によると、1990年代の単身赴任時代、新幹線で移動する際に読んだという(撮影:編集部)

──企業はどの段階で動くべきだったのでしょうか。噂レベルでは知っていたと釈明する声もあります。

2004年の最高裁での判決確定(ジャニー喜多川氏の性加害を報じた文藝春秋社をジャニーズ事務所が訴えたが、文藝春秋が勝訴した)は重いと思いますよ。メディアはほとんど報道もしなかったが、少なくとも2004年以降、ジャニーズ事務所に対しては(性加害に関する)「合理的な疑い」があった。民事とはいえ判決が確定していた。それは一線を超えている。

対する企業は、合理的な疑いを晴らすように求めるなど、何かしら対応しないといけなかった。自社の取引が結果的に犯罪行為に加担していないか、企業は犯罪行為を防止する役割を果たさなければならない。

「(犯罪が起きているとは)知りませんでした」で今回押し通すのなら、今後たとえば海外の取引先で児童労働の問題が起こったときには、「問題があることを知りませんでした」といって済ませてしまうのだろうか。

──メディアの責任も重大です。信頼を回復していくためにはどうすべきだと思いますか。

今回はどちらかというと過失事案で、対応すべきことをしなかった。それも意図的にやらなかったというよりは、ぼんやりと見過ごしていた。なので再発防止に向けてどういうコンプライアンス体制をつくるかが大事だ。

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