「国立劇場」建て替え入札業者すべて辞退の裏事情 伝統芸能の聖地が再開メド立たない異常事態に

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国立劇場は休館中に主催の公演を行えないわけだが、「実演家の技芸や公演制作及び舞台技術に係る知見等の継承や、学校団体等の活動に支障をきたすことから、休館期間中にも可能な限り公演事業を継続させることが必要である」(前掲の基本計画)とし、公演事業を継続するための代替案として、次のようなことが考えられとしている。

・振興会の所有する各劇場(新国立劇場、国立能楽堂、国立文楽劇場)の使用を優先的に検討する。
・都内の文化施設での公演実施を検討する。
・各地の文化施設等での地方公演の実施を検討する。

新国立劇場は東京渋谷にある劇場で大中小3つの劇場を有する。しかし、オペラやバレエ、現代演劇等の上演を想定した設計で、花道の仮設は困難だろう。

国立能楽堂は東京・渋谷にある客席数591席の能舞台だ。本舞台下手に橋掛かりという花道のような舞台がある。

また国立文楽劇場は大阪にある。

新しい国立劇場はどのような姿になるのか

建て替え事業の概要は、概算事業費800億円(未公表だが、日刊建設工業新聞が自民党・文化立国調査会報告での数字として報道)で、BTO(建設・移管・運営)方式のPFIを導入する。施設整備とともに維持管理と運営を民間事業者に任せる。建ぺい率50%、容積率約500%が上限だ。

2020年3月の基本計画では、新施設は大劇場・小劇場・演芸場、伝統芸能伝承のための研究施設などの機能を入れた総延べ5万1400平方メートル程度の規模を想定。低層部に劇場を配置し、併せてホテルやレストランなど民間収益施設を建設する。劇場部分以外の未利用容積を活用して民間収益施設を整備し、定期借地権契約で土地代の収入を得る仕組みだ。

新劇場は「伝統芸能の伝承と創造の中核拠点」と位置づけられ、「国内外の人々の交流を生み出す文化観光拠点」を目指す。「日本らしさ」を演出し、観劇チケットを持たない人も利用できるグランドロビーを設け、レストランやホテルと一体化する計画だという。

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