無数の悩みは「具体と抽象」でシンプルになる 「見えない世界」は抽象化によって広げられる
さて、これらを踏まえたうえであらためて、「具体」と「抽象」の意味を考えてみよう。
まず「具体」だが、この言葉の「具」は訓読みすれば「具(そな)わる」である。つまり、「体」をそなえているものが具体だということだ。「体」は文字どおりの「身体」あるいは「実体」のように、“そこにものがある”というイメージ。
したがって具体とは、「実体をそなえている」といった意味になる。
では、「抽象」はどうだろう? 「抽」は「抽(ひ)く」や「抽(ぬ)く」と読むことができるので、すなわち「引き出す」とか「抜き出す」といった意味である。そして「象」は「象徴」や「象形文字」で用いられることからわかるように、“形にならない特徴”あるいは“シンボル”といったものである。
したがって「抽象」の文字どおりの意味は、「形にならない特徴を引き出す」となるのだ。
つまり、「見えるもの」を代表とする五感で感じられるものが具体であり、そこから「見えない特徴」を抜き出したものが抽象という関係になっているのである。
ここで説明した抽象というのは、目に見える具体とセットになって存在するもので、これらの関係を頭の中であやつることが人間の知的能力の正体なのです。(28ページより)
「見えない世界」を抽象化によって広げる
著者によれば本書の目的は、頭のなかの「見えない世界」を、“「具体と抽象」や具体から抽象を見るための抽象化”というツールによって思い切り広げてもらうことだという。つまりは前ページのイラストの、右の状態に近づけるということだ。
もちろんそこにあるのは、必ずしもプラスのことだけではないかもしれない。人間に数え切れないほどの悩みがあることを考えれば、負の部分も想像できるわけだ。しかしその一方、見えない世界が見えることがもたらすメリットもはかり知れないだろう。
だからこそ、平易な解説による本書を読み進めていけば「具体と抽象」のイメージをはっきりとつかめるようになるに違いない。
私が本棚に本書を陳列しているのも、ここに描かれたその部分を家族にもつかんでほしい(というより、楽しんでほしい)と考えるからである。
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