無数の悩みは「具体と抽象」でシンプルになる 「見えない世界」は抽象化によって広げられる

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最初の項で著者は、「動物と人間の違いとはなんだと思いますか?」と読者に問いかけている。いわれてみれば、これはなかなか答えにくい問題だ。もちろん見た目がまったく異なるが、とはいえ猿やチンパンジーなどと比較するとしたら、決定的に違うとはいい切れなくなってくるからだ。

むしろ決定的な違いは外見ではなく、科学技術の結晶である自動車やスマートフォンなどのツールを使いこなしたりすることかもしれない。

あるいは、動物とはくらべものにならない「万」や「億」といった単位の人の集団(=国や民族)を形成することで、数人では実現できないインフラ(道路、電気、水道、デジタルネットワークなど)を活用して集団行動を営めることでもあるだろう。

このような圧倒的な差があるのは人間の知識や知恵という「知的能力」(頭を使って何かを成し遂げる能力)ということができます。
走ったり跳んだりといった身体的能力で人間より優れた動物はたくさんいます。ですが、知的能力については他の動物にくらべて人間は圧倒的な能力をもつことが動物との決定的な違いであることは賛成してもらえると思います。(24ページより)

いうまでもなく、知的能力は目に見えないものだ。さらにいえば五感で感じることが難しく、簡単に見たり聞いたり触ったり嗅いだりすることもできない。そして五感そのものについていえば、人間と動物に大きな差異はなく、それどころか犬の聴覚や嗅覚など、部分的には人間より優れている動物も少なくない。

だが知的能力は目で見たり耳で聞いたりすることが困難であり、この能力に関していえば人間より優れている動物は基本的に存在しないと考えられる。つまり人間の知的能力をある面から表現すれば、「動物には見えない世界が見えている」ということなのだ。

人間にしかできないこと

私たち人間には「見えないものが見えている」わけだが、はたしてそれをどう説明すればいいのだろうか?

この問いに答えるべく、著者は誰かにSNSでメッセージを送ったときのことを例に挙げている。相手が読んだはずなのに返事が来ない、いわゆる「既読スルー」の状態を経験したケースだ。

そんなときには、「なにか気に触るような表現をしてしまったのではないか」とか「知らない間に不愉快な思いをさせたのではないか」など、余計な心配をして悩むことになるかもしれない。しかしそうした不安や心配は、他人からはまったく見えないものでもある。

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