日本では偏見の対象「左利きの女性」苦難の歴史 なぜ左手で箸を持つと「不作法」と言われたのか

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じつは海外で書かれた書籍が、日本の左利き女性と結婚をめぐる逸話を紹介しています。

《かつて日本では、(中略)左利きの娘は嫁の貰い手がなく、結婚したあとで左利きとわかれば、夫の意志で離婚することができた》(ジェームス・ブリス他著『左利きの本』)や、《左利きの若い女性は、花婿を捜すのに右利きのふりをしなければならなかった》(M・ガードナー著『新版 自然界における左と右』)といったぐあいに。

左利きとは親の「しつけ」の問題だった

いずれも話のよりどころは定かでなく過去の文献などの孫引きを重ねたのではないかと考えられますが、ロングセラー『育児の百科』の著者松田道雄も「もうひとつの女性の人権問題」をしかと捉えていました。

《ことに女の子は、左ききでも右手でおはしをもち、右手で字を書くようにしつけないと、母親の怠慢のように思われた時代がありました。お見合いのとき、若い娘が左ききであることをわからせる動作をみせたら、破談になることが少なくありませんでした》(『松田道雄の安心育児』より)

左利きが原因によるお見合いの破談や離婚を経験したという女性の逸話は他にも散見されるものの、当事者としての思いは活字として残されるものではありません。それはさておき、どうして左利きの女性は結婚に差し障りがあったのでしょうか?

かつて女性の結婚が他家への永久就職を意味していた頃、左利きとは親の「しつけ」の問題でした。特に女性は世間で人並みであることが強く求められ、右利きと同じ所作でなければ悪癖とみなされたのです。

それゆえに「娘を見るより母を見よ」ということわざが、長らくお見合いの鉄則とされてきました。 若い女性の将来は母親の一挙手一投足を見ればよいとなれば、の左利きを矯正しようと躍起になるのはやむを得ません。

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