納期に間に合わないが「残業はしない」はアリ? 「残業せずに帰るのは"当然の権利"」なのか

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それでは、残業せず帰るのは「当然の権利」という主張に、どう対処するのか。責任・権限・義務(三面等価の原則)を使いながら解説しよう。

仕事をするうえで基本的な考えなので、上司も部下も正しく理解しておく必要がある。まずは、言葉の定義のおさらいからだ。

1、責任とは?
2、権限とは?
3、義務とは?

任された職務をまっとうすること

まず、責任についてである。責任とは、任された職務をまっとうすることだ。

数十分で終わる小さなタスクでも、そのタスクを適切に処理する責任はある。いっぽう年間目標のような大きなものも、その達成のための継続的な取り組みと結果に対する責任がある。

責任については、多くの人は理解しているだろう。では2の権限についてはどうか。

多くの人は権限について正しく理解し、意識していないものと思われる。権限とは、仕事をまっとうするために経営リソースを活用できることだ。

自分ひとりでは期待通りの結果を出せないとき、上司に相談したり、職場仲間に手伝いを依頼することができる。大きなプロジェクトを任されたのなら、その目的を果たすために申請してメンバーを招集したり、コストをかけることもできる。

したがってどんなに全力で頑張ろうとも、権限も使わずに目標が未達成だったというのではいけない。職務をまっとうするためにも、組織のリソースを主体的に使わなければならないのだ。

3の義務も、正しく理解している人は多くないだろう。

義務とは、職務をまっとうしているかを報告する義務のことだ。組織のリソースを活用する場合の説明義務も含まれる。

例えば、上司から企画書を作ってほしいと言われたとしよう。そうしたら、企画書作成の進捗状況を報告する義務がある。

「あの企画書どうなった?」

と依頼者から確認されるようでは義務を果たしているとは言えない。また、もし作業中にわからないことが出てきたら、

「データはどのように準備したらいいですか?」

などと相談すればいい。相談する権限があるのだから、悩んで時間を浪費してはいけない。

ただ、「木村さんに相談すれば、適切なデータを用意してくれるよ」

とアドバイスされたのなら、木村さんに相談した後どうなったかを報告する義務がある。このように義務というのは、責任や権限の概念に紐づくものだ。

とくに報告義務を怠りがちな人は、気を付ける必要がある。進捗報告、結果報告は仕事の基本である。

だから任された仕事が終わってもいないのに、進捗報告もせず、定時が来たから帰宅しようとするのは話にならない。

冒頭の課長が「はらわたが煮えくり返りそうになった」という気持ちも、十分に理解できる。

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