SNSで殺害予告、医師への卑劣な「言葉の暴力」 ワクチン不信ではびこる匿名アカウントの実態

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Xの匿名アカウント(発信者)を特定するには、まず誹謗中傷の投稿を「証拠保全」する。

そしてXに対する「開示命令」、または「仮処分」を裁判所に申し立て、匿名アカウントに発信者がログインした際のIPアドレス、電話番号の開示を求める。「開示命令」はプロバイダ責任制限法の改正によって、2022年10月に手続きの迅速化を目的に新設された制度だ。

「従来の『仮処分』は、電話番号の開示請求ができず、発信者の特定まで最大1年ほどかかりました。新設された『開示命令』を使うと、IPアドレスと電話番号も請求可能で、早ければ3カ月程度で特定に至るケースもあります。裁判所に納める金額も1件1000円と費用負担が軽くなりました。ただし申立件数が急増して、現在では裁判所の対応が追いつかない状況になっています」(岡医師の代理人を務める弁護士)

裁判所が情報開示の正当性を認めると、X社はIPアドレスや電話番号を開示する。この情報によって発信者が契約しているプロバイダ(通信業者)が判明するので、氏名と住所が特定可能になるのだ。 

岡氏の場合、悪質な誹謗中傷の約100件のうち、まず12件の情報開示請求を2023年4月に行い、8月に裁判所がすべての開示を認めた。

慰謝料の金額が低すぎて被害に見合わない

民事では示談による和解か、民事訴訟の2択となる。現実的にどのように決着するのか、清水陽平弁護士が解説する。

「示談(和解)では、損害賠償と謝罪、誹謗中傷を二度としないという誓約がセットになります。謝罪は被害者に直接会って行うことはまれで、手紙が多いです。裁判の判決では、約30万〜60万円が慰謝料、特定するまでの調査費用が50万〜100万円。この合計金額が損害賠償の支払いとして、発信者に命じられるイメージです。しかし、慰謝料の金額が低くすぎて被害に見合わないですし、抑止力になりません。見直す時期にあると思います」

岡氏の代理人によると、すでに発信者からの要望によって1件の和解が成立したという。和解時に賠償金額を提示するのは、主に被害者側なので、判決を受けるよりも高い傾向がある。それでも発信者が和解を求めるのは、紛争の長期化を回避したい、などの事情があるようだ。

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