リスクを恩恵が上回る──。国の説明をどう信用したらいいのか。
「薬がない」。こんな言葉が医療現場で当たり前のように聞かれるようになって久しい。『週刊東洋経済』の10月10日発売号(10月14日号)は「薬クライシス」を特集。供給不安の深層を製薬メーカーと薬局の両方から浮き彫りにします。
2021年8月3日、愛知県豊明市の藤田医科大学病院で、プロ野球中日ドラゴンズのリリーフ投手だった木下雄介さんが亡くなった。享年27。主治医たちは新型コロナワクチン接種と死亡の因果関係について「関連あり」と厚生労働省に報告する。その決め手は「心筋炎」だった。
雄介さんはモデルナのm(メッセンジャー)RNAワクチンの初回接種から8日後、中日の練習場で筋力トレーニング中に倒れ、心肺停止状態に陥った。救急搬送され、懸命な治療がひと月近く続けられたが、多臓器不全で逝く。病理解剖の結果、劇症型心筋炎の発症が確認できた。過去に例のないパターンで心臓の筋肉が炎症を起こしており、主治医はワクチン接種が原因と推認する。
厚労省は「評価不能」と判定
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