中島:先生だけでなく、先行き不透明な時代、将来を不安に思う子供も多いですよね。何をしたいかがわからず、漠然とした焦燥感を抱えています。
その一方で、昨日、新渡戸文化学園の生徒たちと話す機会がありました。中学・高校では週に1日、日頃の学びと社会課題を結びつけて考える探究活動を行っている学校です。彼らは、「先生がとても楽しそうに授業をしてくれているので、私たちも学校がすごく楽しい」と言っていました。そしてもう一つ、未来への不安について聞いたら、こんな答えが返ってきました。
「私たちは先行き不透明なほうが楽しい。自分たちで課題を見つけて解決していくのって、ゲームみたいで最高!」
ああ、こういう思考ができる子供たちを育てていかなければいけないと強く思いました。そしてまた、やっぱり先生がイキイキと働いている姿って、子供に与える影響は大きいのだとあらためて感じました。
妹尾:子供にとって、一番身近な大人は親で、その次が先生ですから、この二者の影響はものすごく大きいですね。でも、だからといって「先生頑張れ」「保護者も頑張れ」と言うだけでは変わらないし、頑張っている大人がより疲弊してしまいます。
新渡戸文化学園は、探究活動のみならず、多くの社会人が授業に参加している学校としても知られていますね。ビジネスパーソンがオンラインで中学生らとつながって、アドバイスしたりする。子供のまわりにそうした第三者がいること、面白い大人たちに加わってもらうことは大事なポイントだと思います。
先生も生徒も学校を飛び出そう
中島:学校を拠点に、地域や社会との関係性をいかに作るか、ということですよね。ウェルビーイングの考え方でも、多様な人と人とのつながりが多い人は幸せだというデータがあります。その意味では、先生が外に出ていってサードプレイスを作ることも大切ではないでしょうか。視野が広がり、先生自身が面白い経験を生徒たちに話すこともできます。
妹尾:生徒たちが外に飛び出していってもいいですよね。10年ほど前の話ですが、大正大学地域創生学部の浦崎太郎教授は、岐阜県立可児高校の教諭時代、地域社会と結びついた課外活動を積極的に行っていました。当初、積極的に賛成する教員は少なく、重苦しい雰囲気だったそうです。進学校ですし、そんな余裕はないと。