子供にとってのウェルビーイングとは?
妹尾:何が本当に子供にとってのウェルビーイングなのかを考えたとき、参考になるのが熊本市の遠藤洋路教育長の視点です。遠藤教育長は、将来のためと言って、子供に「今」を我慢させることに疑問を呈しています。
以下は私の解釈になりますが、たとえば数学はすごく得意だけど英語が苦手だという子供に、「入試に出るから」と数学より英語を勉強させようとする。学校でも家庭でも、得意を伸ばすより苦手を克服させることに重きを置きがちです。もちろん子供の将来を思ってのことなのですし、私も親として気持ちはよくわかるのですが、子供たちの「今」のウェルビーイングを軽視するのも疑問です。その子は数学に熱中していくなかで、英語で書かれた情報を読む必要性が出てきて、英語の勉強もしたくなるかもしれない。
中島:確かに、本校も子供たちが幸せでいてほしいという思いでウェルビーイングの考えを取り入れていますが、現在の幸せを大切にすることと、将来の幸せにつながる部分を支援することの2つの側面がありますね。
妹尾:現在の幸せを考えた場合、家庭で問題を抱えているケースもありますから、学校だけでなく、自治体や地域団体の福祉関係者とも連携する必要があります。遠藤教育長は、「現在の幸せに関わる福祉の専門家をもっと学校に入れるべきだ」と提唱されていて、その通りだと思いました。今の学校では、将来のための学習指導や進路指導が強くなりがちです。