中島:教育現場は、さまざまな課題が山積しています。とりわけ教職員の離職や、病気による休職者の増加、それに伴う人手不足。先生たちが楽しく働いていなければ学校の雰囲気は悪くなり、子供たちにもそれは伝わります。
私は、先生たちに幸せに働いてもらいたい。そして子供たちが毎日行きたくなるような学校にしたい。ウェルビーイングの考え方を学校に取り入れたのは、そうした思いがあったからです。
妹尾:教育政策上も、学校運営でも、これまで教職員のウェルビーイングには冷淡だった印象を私は持っていますが、一つにはどう実践したらいいかわからない、ということもあると思います。
ウェルビーイングを実践する「SPIRE理論」
中島:確かにそうですね。私が学校で実践しているウェルビーイング理論の一つに、「SPIRE理論」があります。
ウェルビーイング研究のスペシャリストである、タル・ベン・シャハー博士が考案したものです。
「S」は精神的(Spiritual)ウェルビーイングで、自己肯定感があり主体的な行動ができること、自分らしさを発揮することなどです。
「P」は心身的(Physical)ウェルビーイングで、心と体が健康であること。
「I」は知性的(Intellectual)ウェルビーイングで知的好奇心を持てること。
「R」は人間関係的(Relational)ウェルビーイングで、人間関係が良好なこと。
「E」が感情的(Emotional)ウェルビーイングで、楽しいと思えること、何かつらいことがあっても立ち直れる力を持っていることです。