学校名で人を判断するのはいい加減やめませんか ウェルビーイングを学校で実践して起こった事

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妹尾昌俊(せのお・まさとし)/教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク代表理事。徳島県出身。野村総合研究所を経て、2016年に独立。全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。学校業務改善アドバイザー、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、「質の高い教師の確保特別部会」委員、文科省・GIGAスクール下での校務の情報化の在り方専門家会議委員なども務めた。Yahoo!ニュースオーサー。主な著書に『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』(教育開発研究所)、『教師と学校の失敗学』(PHP研究所)、『変わる学校、変わらない学校』(学事出版)など多数。5人の子育て中(撮影:尾形文繁)

妹尾:これからはどこの大学を出たかということより、その人が学び続けられるかどうか、知的好奇心をもって歩み続けられるかどうかが、以前にも増して問われるようになると思います。

もちろん基礎的な学力がないと応用もききませんから、学力調査の結果や高校入試、大学入試の状況をまったく無視していいとは思いません。ただ、それだけが評価軸ではないということです。成績には反映しづらいけれど、何か熱中できるようなものを持っている子供なら、保護者や先生はそれに対してもっと寛容になってもいい。「好きこそものの上手なれ」とも言いますし。

私は、これからの学校教育のキーワードの一つは「ウェルビーイング」だと思っているのですが、好きなことをもっていと幸せですね。学校でも家庭でも、他人と比べることを重視し過ぎると、一部の子供たちにとっては精神的にしんどいし、ウェルビーイングでなくなります。中島先生は小学校の校長先生として、まさにウェルビーイングな学校づくりを実践されていますよね。

中島:はい。ウェルビーイングや、そのための主体的な学び、探究学習を進めていこうと、校長をしている上尾市立平方北小学校のほか、さまざまな教育機関で話をしています。

しかし小学校では「まだいい」、中学校では「高校受験がある」、高校では「大学受験がある」、大学では「就職活動がある」と、それぞれに大きな壁が立ちはだかります。「だから、やりたいけどできません」という声をよく聞きます。

先生たちに幸せに働いてもらいたい

妹尾:そもそも学校だけが頑張って、子供たちのウェルビーイングを高めるのは限界があるのではないでしょうか。社会全体が変わっていかないと。そして学校に求めるものも変えていかないと。そうでなければ、いつまでも学校は「学歴証明書発行機関」のままです。

中島:経済成長こそが重要で、GDPの伸びが幸せの証しって、何かまだ染みついている気がしませんか。親は子供に苦労させまいと、いい大学に進学させ、いい企業に就職させる。そのためのレールを敷いてしまう。

でも、そろそろ国民が実感する幸福度であるGNH(国民総幸福量)をベースにしたらどうでしょう。すると、ウェルビーイングは学校現場だけの問題ではなくなります。

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