IHIの最高益を牽引した"翼の下の力持ち" 重工大手2社の航空部門トップに聞く(下)
――民間航空エンジンのビジネスモデルは独特といわれる。
極めて特殊だ。機体メーカーは機体1機、1機で投資を回収していくが、エンジンはハードを普及させて、後からついてくる交換用の部品販売、つまりアフター収入で投資を回収する。
同じ航空機産業でも、機体メーカーとエンジンメーカーのビジネスモデルは大きく異なる。なぜそんなビジネスモデルになっているかというと、エンジンはエンジンで激しい販売競争をやっているからだ。100席クラス以上の旅客機の場合、通常は機体メーカーが2種類のエンジンを用意して、エアラインがどちらかを選択する仕組みになっている。
当然、価格が高ければエアラインに買ってもらえない。そこでエンジンメーカーは、まずは買ってもらうことを優先して値段を大幅にディスカウントし、アフターで利益を取っていく。旅客機エンジンの業界はそういうビジネスモデルになっている。当社の民間航空エンジン事業もビジネスモデルは同じだ。
投資回収には15~20年かかる
――当然、投資回収までの期間は長くなる。
長いなんてもんじゃない。航空エンジンは研究開発費が非常に重いうえ、量産のための設備投資、増産投資と最初はずっと投資が続く。一方、エンジンの累計出荷台数がある程度まで増えないと肝心のアフター収入がついてこないので、それまで損益的には沈みっぱなし。
投資の回収には開発着手から15~20年かかる。したがって、このビジネスは、資金的にも収益的にも長期にわたって堪え忍ぶ相当な覚悟がいる。
当社の民間航空エンジン事業にしても、本格的に利益が出るようになったのは最近のこと。プロジェクトに参画しているエンジンの累計販売台数が積み上がり、それを背景に利益率の高いアフター収入が増えてきた。ハード自体の売上高も当然増えているが、民間航空エンジン事業の売上高に占めるアフター収入比率は4割ぐらいにまで上がってきた。
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