理研の卓越研究員雇い止めが「不正」である理由 4年半の雇用期間は卓越制度の趣旨に反する

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弁護士らで構成する調査委員会は、理研の主張をおおむね認めた(撮影:尾形文繁)

理化学研究所が、卓越研究員として採用した若手研究者を4年半後の2023年3月末に雇い止めした問題(『理研が逸材を中国に流出させた「アカハラ」の全貌』)で、理研が設置した調査委員会は理研の行為を『「不正」「不適切」と評価するにはあたらない』と結論づける報告書を9月29日に発表した。

だが、調査委が公平で適切な評価を下しているとは限らない。そこで改めて調べると、まったく逆の結論が浮かび上がってきた。

卓越研究員制度とは、政府が認定した優秀な若手研究者を、研究機関が安定的で自立した環境で研究できるポストで雇えば政府が研究機関に補助金を出すというものだ。

4年半の雇用期間は明示せず

今回の案件について、理研は文部科学省に卓越研究員として雇用するポストの認定を求める過程で、2018年10月から2025年3月末までの6年半の雇用期間を用意すると記した書類を提出していた。本当は、研究者の職歴次第では後述する理研の「10年ルール」によって雇用期間が2023年3月末までの4年半になる可能性があったが、そのことは申請書類の中で明示していなかった。

また、当該の若手研究者であるA氏は「理研からは卓越研究員として2025年3月末までは雇用すると言われていたのに、約束を反故にされて雇い止めされた」と主張している。

こうした点について調査委は、「理研側に大きな問題なし」という判定を下した。だが、事実関係や関連資料を辿ると、理研の「不正」や「不適切」にあたる行為が明らかになった。

A氏は2013年4月に理研に入り、毎年度末に1年契約を更新する有期雇用の研究者として働いてきた。そうした中で理研は2016年、有期雇用の期間は通算10年までとする10年ルールを設けた。

改正労働契約法と、その関連の改正研究開発力強化法によって、一般の労働者は有期雇用の通算期間が5年、研究者の場合は10年を超えれば、被雇用者側が雇用の無期転換申込権を得られるようになったからだ。

この10年ルールの結果、A氏の雇用期間は最長でも2023年3月末までとなった。その一方、A氏は当時の上司B氏の強い勧めで、卓越研究員ポストである理研のユニットリーダー職(以下UL。着任は2018年10月)に応募して採用された。

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