「変革への意思や体制強化計画が評価された。大変光栄に思うとともに、身の引き締まる思いだ」
9月1日、政府の10兆円ファンドの支援対象となる「国際卓越研究大学」の最終候補に選ばれた東北大学の大野英男学長は、記者会見で喜びを語ると同時にそう自己評価してみせた。正式認定にはまだプロセスが残るが、東京大学や京都大学を差し置いて事実上、卓越大の第1号に内定した。今後、長期にわたりファンドから年間数百億円の支援を受ける見込みだ。
政府からの覚えがめでたい
文部科学省が公表した審査結果の東北大学の箇所を読むと、若手研究者が挑戦できる機会の拡大に向けて若手の安定雇用を推進する「テニュアトラック制度の全学展開を図っていること」が、評価ポイントの1つとして挙げられている。
テニュアトラック制度とは、平たく言えば若手研究者をまず試用期間にあたる3~5年程度の有期雇用で雇い、公正な審査を受ける機会を与えて、それに通過すれば終身雇用を意味する「テニュア」のポストに登用するというもの。発祥はアメリカの大学で世界的にも広く普及しており、文科省も制度として明確に定義している。
研究の世界では終身雇用のポストの数が乏しく、若手研究者は優秀でも長らく有期雇用の不安定な立場にあることが多い。そのため、若手研究者が頑張り次第で終身雇用になれるテニュアトラック制度の導入状況は、政府も大学を評価する際に重要視している。
東北大学では2018年からテニュアトラック制度の導入を広くアピールしてきた。ところが、「実際にはほとんどテニュアに登用していない」という指摘が在籍していた若手研究者から相次いでいる。
東北大学が言う「テニュアトラック制度」は、本来の姿とは乖離した「名ばかりテニュアトラック」の疑惑がぬぐえない。真相を究明するために、東北大学の理事、在籍していた研究者らに直撃した。
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