そもそも、小谷氏が主張するように東北大学テニュアトラック制度が一般のテニュアトラック制度とはまったく違うものであるのならば、元よりテニュアトラック制度を名乗るべきではない。
政府からの評価を得たり、優秀な若手研究者を集めたりするために「外部から見れば立派にテニュアトラックをやっているように装う意図」がなければ、その必要性もない。少なくとも、プレスリリースや公募要領には「東北大学テニュアトラック制度は、一般のテニュアトラック制度とは違います」と明記すべきだ。
なぜそのようにしなかったのかをただすと、小谷氏は「私はその当時の担当ではないので、なぜというところはわからない」と話した。
東北大学の手法の是非について見解を文部科学省に問い合わせると、「そうした状況は、これまで把握していなかった」(国立大学法人支援課)という。
KPIに必死になる事情
国際卓越研究大学の選考に限らず、国立大学は資金獲得のうえで厳しい競争にさらされている。2004年に国立大学が法人化して以降、政府から配られる安定的な基盤財源である運営費交付金は大きく減らされてきた。さらに、運営費交付金の分配にも、若手研究者比率や研究成果などに対する政府からの評価で傾斜がつけられるようになっている。
そのような中で、大学側も生き残りに必死だ。今回、取材に応じた過去の在籍者からは「財布を握る政府がテニュアトラック制度などを重視し、大学は政府がつくったKPI(重要業績評価指標)を懸命に追わなければならない。東北大学のやり方は良くないが、やむをえない面がある」という同情の声もあった。ただ、どのような事情があるにしても、健全なあり方ではないだろう。
なりふり構わずKPIを追わなければいけない構造がこのような事態を招いているのであれば、他大学も含めて不明朗な行為が行われている可能性がある。政府は資金の「選択と集中」を進めて大学間の競争を煽っているが、副作用による歪みにも目を向け、原因を顧みて対応を考えるべきだ。
(理事・副学長(研究担当)である小谷氏へのインタビューは、『東北大、「名ばかりテニュアトラック」への言い分』)
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