「東北大学テニュアトラック制度」の創設を発表したのは、2018年9月のことだ。具体的には、若手研究者をメインとする学際科学フロンティア研究所(学際研)の教員公募にテニュアトラック制度を導入した。翌年度以降にはこの制度に基づき、物質材料・エネルギーや生命・環境など6つの研究領域で若手研究者を採用していくというものだった。
だが、実際に入った複数の若手研究者らの証言によると、採用された職員のうちテニュアになれているのはほんのわずかで「10人に1人くらい」「1割もいない」という。
初めからノーチャンスの事例も少なくなかった
テニュアへの登用率が低いという以前に、東北大学における最大の問題はテニュアへの登用審査すら行っていないケースが多発していることだ。テニュアトラック制度では、本来、テニュア審査に合格した場合に備えて、テニュアポストの空きをきちんと確保したうえで募集をかけるのがあるべき姿だ。だが、東北大学テニュアトラック制度ではさまざまな分野で、そもそもテニュアのいすを用意せずに職員を公募してきた。
するとどうなるか。若手研究者がどれだけ頑張っても、テニュアにはなれないことが初めから決まっているわけだ。在籍していた複数の若手研究者が、「テニュア審査を受けるためにポストの照会をしてもらったが、(受け入れ先となる工学部や理学部などの)部局にポストの空きがないので却下され、そこで終わった」と証言している。
東北大学に、東北大学テニュアトラック制度でこれまでやってきたことに問題がないかを問い合わせると、理事・副学長(研究担当)の小谷元子氏が取材に応じた。
小谷氏はまず、「東北大学テニュアトラック制度は、一般的なテニュアトラック制度ではない」と主張した。禅問答のようだが、小谷氏は「東北大学テニュアトラック制度は、大学の中で少しでもテニュアトラックを増やしたくて、(学内の)各部局に考えてもらうためにつくったもの」「公募要領にも東北大学の『テニュアトラック推進に関する方針により』と書いている。外部には(一般と同じ意味での)テニュアトラック制度だとは申していない」と説明する。
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