理研の卓越研究員雇い止めが「不正」である理由 4年半の雇用期間は卓越制度の趣旨に反する

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もっともA氏は当初、卓越研究員の話には乗り気ではなく断っていたという。10年ルールのため、卓越研究員としてULになり、新たに研究室を立ち上げても期間が2023年3月末までの4年半しかないからだ。だが、B氏からは「2025年3月末までの6年半は卓越研究員として雇うので心配しなくていい」と持ち掛けられ、断れなかったという。

しかしその後、A氏がB氏からのアカハラを指摘して両者の関係が破綻すると、理研からは10年ルールを盾に、2023年3月末で雇用を打ち切られたという。

理研の主張通りでも「不正」が存在

調査委の報告書によると、B氏はヒアリングに対し、A氏を2025年3月末まで雇うという口約束を否定。理研側は、A氏との卓越研究員の雇用期間は10年ルールに基づく雇用契約通り2023年3月末までの4年半で合意していたと主張している。A氏とは言い分が食い違っているのだ。

仮に理研の言う通りだったとしても、「不正」や「不適切」な行為が存在する。

まず、前述の通り理研は、卓越研究員のポスト提示で文科省に提出した申請書類では雇用期間を2025年3月末までの6年半と記していたにもかかわらず、実際には4年半で雇い止めした。このことは5月の国会でも、文部科学大臣(当時)の永岡桂子氏が「提示ポストの説明と異なる形で当該研究者の雇用が終了したことは大変遺憾だ」と答弁している。

そもそも卓越研究員制度では本来、テニュアトラック制での雇用が求められている。テニュアトラック制とは、まず使用期間に当たる数年の有期契約で雇用し、その期間内にテニュア(終身雇用)ポストへの公正な昇格審査を受ける機会を与えるというものだ。

ただし、卓越研究員制度に関する政府資料によると、テニュアトラック制を使わず無期雇用になる可能性がない雇用形態でも、「雇用の確保と将来の見通しを示す研究環境が最大限確保(例:5~10年程度の雇用確保等)されれば、要件に合致すると認める場合がある」という。

卓越研究員制度の主目的が雇用の安定化であることに照らせば、文科省が「要件に合致するかどうか」を判断する材料として、雇用期間は最も大切な情報の1つである。

理研の「10年ルール」による雇い止め自体にも多くの研究者から非難の声が出ている(記者撮影)
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