浅田真央を復帰に導いた「感情コントロール」 「後悔」は一生自分を攻撃し続ける原因になる

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ところで、第一次感情には「後悔」も含まれます。浅田選手は会見で「自然と試合が恋しくなり、達成感を感じたくなったのが一つの理由。試合に出場できるよう毎日練習している」と話しており、ここには「後悔したくない」の一念があったのではないかと思うのです。

同じ会見の中で浅田選手は、日本スケート界の先駆者である伊藤みどりさんに「自分がやりたいと思っても、できないときがある。やりたいと思ったら、やった方がいい」と背中を押されたことも語っています。

後悔を抱え続けてしまう人生は、とても辛い。それは「自分に対する怒りのもと」になるからです。そして怒りには「持続性」を伴いますから、「後悔」による怒りがいつまでも自分を攻撃し続ける、とても悪いスパイラルに陥ってしまう可能性が出てしまいます。

「疑似成功再体験」が心を強くする

そんなふうにならないために、アンガーマネジメントには「ポジティブモーメント」というテクニックがあります。気持ちが沈み、不安からイライラしそうなとき、過去の成功体験を思い出すなどして、前向きな気持ちに切り替え、心配事でもうまくいくことをイメージする。言わば「擬似的成功再体験」です。

ソチ五輪のショートプログラムで、まさかの16位発進となった浅田選手は、背水の陣で挑むフリー演技で、「8トリプル」と呼ばれる、3回転以上のジャンプを8つ跳ぶ、女子では誰も成功させていないプログラム構成に試み、見事すべてのジャンプを成功させました。

それにより、これまでの自己最高スコアだった136.33点を上回る142.71点をマーク。順位を入賞となる6位へ一気に引き上げました。演技後の万感の想いのこもった、何とも言えない会心の表情を忘れられないという方も多いのではないでしょうか。

浅田選手には、「8トリプル」を決めたときのイメージをいつも身近に思い出してもらい、また「ハッピーシナリオ」「ミラクルデイ」などそのほかのアンガーマネジメント的取り組みもたくさん講じてもらい、再び私たちに氷上での「真央ちゃんスマイル」を見せてもらいたいですね。心より、応援したいです。

アンガーマネジメントに興味を持たれたかたは、拙著『パワハラ防止のためのアンガーマネジメント入門』(東洋経済新報社)をご高覧ください。

小林 浩志 日本アンガーマネジメント協会認定ファシリテーター

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こばやし こうじ / Kobayashi Koji

 

青山学院大学大学院法学研究科修了(法学修士)。
横浜市戸塚区で社会保険労務士・行政書士の事務所を経営する傍ら、社会人大学院でパワーハラスメントの法的・実務的対策を研究。パワハラ防止策の有効なツールとしてのアンガーマネジメントを数多くの企業、学校、病院等へ紹介している。
・特定社会保険労務士、行政書士、第一種衛生管理者
・公益財団法人21世紀職業財団認定セクハラパワハラ防止コンサルタント(客員講師)
・一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会認定ファシリテーター
・日本スポーツ法学会会員
著書に『パワハラ防止のための アンガーマネジメント入門』(東洋経済新報社)、『現場監督のための 早わかり労働安全衛生法』(共著、東洋経済新報社)などがある。

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