凶暴化する天災「対策には限界がある」という事実 アメリカの現状が示す「強靱化」の実行不可能性

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保険業界が懸念すべき理由は山とある。災害の頻度と被害額が増える中、フロリダやカリフォルニア、ルイジアナといった「高リスク州」での新規保険適用をやめる会社が増えている。ハワイ州でも、マウイの山火事によって保険市場の持続可能性に疑問符が付いた。

保険料が手の届かないレベルにまで高騰したり、保険そのものが利用できなくなったりすれば、経済に広く悪影響が及ぶ。住宅価格は下落し、地方の財産税収入も落ち込むからだ。そうした悪循環は最近まで、とくに災害の起こりやすい地域に限られていたが、被害額の大きな災害が頻発する中、さらに広がっていくおそれがある。

共同体の災害からの立ち直りを支援するNPO「リビルド・バイ・デザイン」の代表エイミー・チェスターは、アメリカはもっと本気で気候変動への適応に取り組む必要があると語る。レジリエンスに費用を投じるだけでなく、一段と高い基準のインフラづくりを州や地方の政府に義務付ける必要があるというわけだ。

危険地域からの移住も避けられない

だが、気候ショックへの適応には、被害を受けやすい地域からの移住支援について「真剣に議論すること」も含まれるとチェスターは言う。「いま人が住んでいる場所のすべてに住み続けることはできないかもしれない」

他方でチェスターは、大規模災害の影響を受けるのは被災者だけではないとも話す。連邦政府の対策費用の増加は「国民全員の負担増」を意味するからだ。

(執筆:Christopher Flavelle記者)
(C)2023 The New York Times

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