検査技師が憂う「脂肪肝」を放置する人の末路 成人男性の約4割、女性の約2割は内臓が汚れている

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肝臓は、エネルギーを蓄える以外にも、たんぱく質の合成、有害物質の分解や解毒、そして、消化に必要な胆汁をつくって消化液として分泌しています。実にさまざまなことをしてくれているんですね。そんな肝臓に負担をかけ続けることになるのが、脂肪肝という状態です。

余ったエネルギーを脂肪に変えて肝臓に蓄えていくと、ちょっと専門的に言えば、細胞膜の透過性が高くなったり肝細胞が壊れたりします。血液検査での酵素の値AST(GOT)、ALT(GPT)は、肝細胞の壊れ具合と比例しています。肝細胞が壊れると、細胞の中にある酵素AST(GOT)、ALT(GPT)が血液中に出てくるためです。このように、脂肪をため込むことによってどんどん肝細胞が壊れていきます。

さらに内臓脂肪組織は、人体最大の内分泌臓器とも言われ、善玉ホルモンと、悪玉ホルモンを分泌します。脂肪細胞が大きくなると、ホルモン分泌のメカニズムに異常がおこり、悪玉ホルモンの分泌が増えます。

この、悪玉ホルモンが過剰に肝臓に流れ込むことにより、肝臓で炎症が起きて不純物の処理が追いつかなくなり、酸化ストレスが発生します。すると、さらに炎症が強くなるため、慢性肝炎から肝硬変、ひいては肝臓がんを引き起こします。実際、超音波検査で見つかる肝臓がんの方々は、脂肪肝を放っておいた方がほとんどです。

肝臓がんの約1割は食べすぎが原因

アルコール性の肝硬変は、お酒を飲むことによって脂肪肝になった後、慢性肝炎になり、肝硬変になる、という道をたどります。ですので、お酒を飲む方は、脂肪肝と言われた段階で、異常は始まっています。アルコール性の肝硬変のうち、14%は肝臓がんになるとのデータがあります。

肝臓がんの原因のうち、割合が多いのはウイルス性の肝硬変で、全体の約7割。次にアルコール性の肝硬変で約2割。残りの1割がそれ以外、すなわちNASH(非アルコール性脂肪肝炎)からの肝硬変です。

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