ジャニーズを「解体すべきでない」4つの本質理由 被害者も所属タレントも守られる道を探れるか

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2と3はセットで考えるのがいいだろう。再発防止特別チームからも、性加害が長きにわたって行われ、それが隠蔽されてきたのは同族経営の弊害によるものだと指摘されている。同族経営を解消するためには、現在、藤島ジュリー氏が100%保有している株式の51%以上を手放す必要がある。

もともと、ソニーの元取締役を社長として招聘する案があったが、うまくいかなかったという報道もある。しかし、コンプライアンスのしっかりしたどこか大手企業が藤島ジュリー氏から51%以上の株式を買い取り、ジャニーズ事務所に取締役を派遣するということが実現できれば、同族経営を脱しつつ、より有効な改革ができるだろう。

4についてだが、現状では金銭的な補償が開始されているが、メンタルケアも含めた包括的な補償、救済案を早急に提示する必要があるだろう。併せて、被害者への謝罪と対話も行っていく必要がある。

記者会見後も、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は、メディアの取材を継続的に受けているのみならず、日弁連に人権救済申し立てを行ったり、新たなメンバーが加わったことを実名で発表したりしている。今後もジャニーズ事務所が有効な救済策をなかなか示すことなく、被害者と対立的な関係になってしまうと、社会的信用の回復もおぼつかなくなり、通常の経営にも悪影響を及ぼす。

後手の対応から、巻き返していけるか

藤島ジュリー前社長が取締役にとどまり、過半数の株式を保有していたほうが、被害者の補償、救済がより有効に行えるという意見もある。

しかし、それでは同族経営、藤島ジュリー氏の下での経営から脱したとは言えない。上記のような方法を取れば、組織改革を行いつつも、被害者の手厚い補償、救済も並行して行うことは十分に可能なはずだ。

9月19日にジャニーズ事務所が発表したリリース。10月2日までにどれだけの巻き返しを図れるだろうか(画像:ジャニーズ事務所HPより)

限られた時間で具体的なことまで決められないとしても、しっかりとした方向性は提示し、それを実行することを約束するところまでは最低限しなければならない。

リスクマネジメントにおいて重要なことは、同じことを言うにしても、タイミングによって効果が全く異なるということだ。

後手に回っている対応を迅速に巻き返し、それを世の中にアピールしていくことが、ジャニーズ事務所の緊急課題であるだろう。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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