「情報開示の優等生」日立が進めた大胆な断捨離 受賞歴多数の「統合報告書」でページ数を半減

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大手コンサルのKPMGが行った調査によれば、統合報告書のページ数は年々増加傾向にある。

881社に対する調査では、平均で75ページの統合報告書を作成していることがわかった。「61ページ以上」の企業は調査対象全体の66%。この比率は2年前から4%ポイント増加している(KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン「日本の企業報告に関する調査2022」)。

ページ数が膨らむ傾向にあるのは、非財務情報の開示ニーズの高まりが背景にある。投資家やステークホルダーなどから、人的資本やサステナビリティ、企業が取り組むべき重要な課題を示す「マテリアリティ」などを詳細に記載するよう求められているのだ。

伊藤忠、オムロン、味の素は100ページ超

各賞で表彰されている常連組の企業をみると、100ページ超えは珍しくない。伊藤忠商事145ページ、オムロン124ページ、味の素115ページ(いずれも2022年発行分でA4判換算)といずれも力作だ。

主要企業の統合報告書のページ数

受賞企業では、人材育成のために行っている具体例を紹介したり、従業員へのアンケート結果とその改善などの定量目標を掲げたりして、人的資本に関する記述を増やす動きがみられる。マテリアリティや企業価値をどう生み出すかを示した「価値共創プロセス」にもページ数が割かれている。

また、コーポレートガバナンスの点でも、従来の社長やCEOによる挨拶文の掲載に加えて、執行役員や社外取締役、指名報酬委員会の委員長など、より幅広い経営メンバーのコメントを掲載する企業が出てきている。

日立も例外ではない。最新版では3人の副社長、指名委員会や報酬委員会など各委員会の委員長のコメントを新たに掲載した。価値共創プロセスなど、直近の開示トレンドも押えている。

それでもページ数を大幅に減らせたのは、事業に関する記述を全面的に見直したからだ。脱炭素など環境についての施策を統合報告書と同時に公開した「サステナビリティレポート」に完全移行し、重複部分をなくしたことも大きい。

そもそも統合報告書の制作を担うIR部門は、統合報告書を作るだけではなく、投資家への説明などで「使う側」にもなる。谷内担当部長は、「事業セクターごとに4ページあると投資家に説明しづらい。対話のツールと位置付けて、1ページにまとめたほうが理解してもらいやすいと考えた」と語る。

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