「情報開示の優等生」日立が進めた大胆な断捨離 受賞歴多数の「統合報告書」でページ数を半減

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日立ではIR部門の3人が統合報告書の制作を主に担当する。9月中旬の発行に向けて1月には企画の検討を始め、4月から具体的な制作プロセスに入る。発行後は統合報告書を使いながら統合報告書説明会を開くなど、投資家との対話を行っている。

そうした投資家との対話の中で、「文章量やページ数が多い」「メッセージの強弱がわかりにくい」といった指摘を受けた。それがきっかけとなり、掲載内容の絞り込みに取り組むことになったという。

「統合報告書の見直しを本格化した2019年以降、社内で理解を得るために苦労する場面は多々あった。だが、社外からの評価も受けて、最近では反対に『自分たちの部署についての情報を減らさないでほしい』という声のほうが多くなった。今後も好循環を維持したい」。谷内担当部長は胸を張る。

「使い勝手のよさ」がポイントに

識者や投資家は、日立の統合報告書のページ数半減をどう受け止めたのか。

資産運用業務に携わり、企業の情報開示に詳しい小野塚恵美氏は、「会社の考え方が整理されたうえで、効率的に重要な情報が伝えられている」と評価する。

投資家サイドの評判もよい。「日立の情報開示は近年大幅に改善してきており、これが投資家からの信頼の向上と株価の再評価につながっている」。統合報告書の開示を踏まえたリポートで、マッコーリーキャピタル証券アナリストのダミアン・トン氏はそうコメントした。

日本株への投資が活発化する中で、統合報告書の開示を求める声が機関投資家を中心に高まっている。そのようなニーズに答える格好で、統合報告書を発行する企業の数は2022年12月末時点で872社になり、5年前と比べて2倍超に増えた(宝印刷D&IR 研究所調べ)。

「日立のページ数半減は勇気のいる判断だったと思う。今後は情報の取捨選択やサステナビリティレポートと組み合わせるなど、『統合報告書の凝縮』が1つのトレンドとなりうる」と、小野塚氏は話す。統合報告書で次に求められるのは、読み手にとっての「使い勝手のよさ」になりそうだ。

梅垣 勇人 東洋経済 記者

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うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

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