もう1つの供給問題は、NVIDIAのビジネスモデルである「ファブレス半導体メーカー」という点に起因する課題だ。NVIDIAは半導体の製造を、世界最大のファウンダリー(受託半導体製造メーカー)であるTSMCに委託して製造を行っている。
このため、製造できる半導体の数は、NVIDIAとTSMCの間で結ばれた契約に縛られることになる。現在世界的に半導体が足りないような状況で、TSMCの製造キャパシティは限界に近い。NVIDIAの需要が増えたからTSMC側がそれに対応して製造数を急に増やすというのは難しい。
しかし、本年に入ってからの生成AIの急速なブームにより、ますます多くの企業がNVIDIAのGPUを必要とするような状況が発生している。6月の時点でフアン氏は「需要に応えられるだけの供給は可能だ」と説明していたが、実際に市場ではNVIDIAのGPUが入荷せず、年単位でバックオーダーになっている代理店もあるほど、供給はタイトになっているというのが業界全体の認識だ。
供給不足解消のカギはIntel?
しかし、ファウンダリー側では製造数を急に増やすことができず、それを行うには年単位の時間が必要になる。こうしたことを受けて、フアン氏は6月に「Intelからテストチップを受け取ったが、その結果は良好に見える」と述べ、今後はTSMCだけでなく、GPU事業では競合でもあるIntelが来年あたりから本格的に稼働させる受託製造サービスを活用する可能性を示唆している。
それにより、TSMCからよりよい条件を引き出し、あるいは本当にIntelで製造して供給量を増やすことが狙いだと思うが、おそらく両方を狙っているのだと考えられる。それにより将来的には供給数を増やすことが可能になる可能性があるが、短期的には今のような供給がタイトな状況が続くことも考えられ、その間に顧客はソフトウェア面では不利でもAMDやIntelなどのGPUを選択する可能性はある。
そうした若干の不安要素はあるが、NVIDIAの強みはソフトウェア環境の充実という点にあり、それを競合他社がひっくり返すのは容易ではない。今後も大企業の生成AIへの注目は続くと考えられていることから、市場が必要としている需要を満たせるような供給を実現することができれば、さらなる成長が期待できるという意味で「NVIDIAの時代」が続くことになりそうだ。
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