ジャニーズ・BM問題で浮上「同族経営」は悪なのか 実は日本企業の9割はファミリービジネスだ

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「同族企業だからだめなのだ」と一般化しがちなのは、ファミリービジネスは長い間、古臭いコーポレートガバナンス(企業統治)だと見られてきたからだ。

なぜなら、1950年代以降、現代企業では株式が複数の株主により分散所有され、「専門経営者」(俗に言う「経営のプロ」「サラリーマン経営者」)が経営を行うとする「所有と経営の分離」(A. バーリーとG. ミーンズ)という考え方が、幅を利かせてきたからだ。ところが、ファミリービジネスは廃れなかった。

日本企業の9割はファミリービジネス

日本はファミリービジネス大国である。浅羽茂著の「〈経営戦略論〉ファミリービジネスの強さと課題」(早稲田ウィークリー)によれば、件数で言えば、421万企業のうち、日本企業の90%は、ファミリービジネスである。中小企業が99%を占め、日本の従業者の約70%に当たる3200万人を雇用している中小企業大国であるという事情が背景にあると見られている。だが、豊田家のトヨタ自動車、鳥井・佐治家のサントリーなど大企業だけでも50%以上をファミリービジネスが占めているのだ。

日本だけでなく、株主重視経営の本山となったアメリカでさえ全企業件数の80~90%、ヨーロッパでもドイツやイタリアが90%以上を占める。社会主義国の中国でさえ85%となっている。つまり、世界中がファミリービジネス大国主導であると言っても過言ではない。 

ファミリービジネスは、総じて業績が良いという事実は、経営学者の間では共通認識になっている。企業家、ファミリービジネス、ベンチャーを研究対象とする学会で発表を聞いていると、定量分析と定性分析を合わせた実証研究に基づき、ファミリービジネスの優位性を説いている内容がほとんどである。長所、短所を比較している研究においても、結論では長所が強調されている。

ところが、一般人(主にビジネスパーソン)の認識は異なる。「あの社長は世襲を企んでいる」「あの会社は同族経営だから」といった言葉が口から無意識に飛び出す。会社の中では創業家を絶賛しながらも、アフターファイブの酒席では同族経営をネタにして、批判しているビジネスパーソンの姿が散見される。

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