また、赤道直下のシンガポールには台風がやってこない。台風が発生する条件はいくつかあるが、台風の渦(空気の渦)が生まれるのは地球の自転による転向力(コリオリの力)が働くからである。
このコリオリの力は低緯度では弱く、高緯度では強くなる。そのため、赤道直下(緯度0度)ではコリオリの力がほとんど働かないため熱帯低気圧は発生せず、台風も襲来もしない。
一方で、モンスーンと呼ばれる季節風の影響で、降水量が多い時期があることや、日々のスコールの発生による一時的な豪雨は見られる。
◎雨は多いのに水不足問題
熱帯雨林気候のシンガポールの年降水量は約2100ミリと、比較的雨量の多い東京(約1600ミリ)に比べても格段に多い。しかし、シンガポールは慢性的な水不足の状態にある。大きな原因は、平らな地形にある。高低差がほとんどない地形では、雨が大量に降っても雨水を貯めておくのが難しい。
貯水池は数カ所あるが、国内で使用する生活用水や工業用水をまかなうだけの量にはならず、建国以来、隣国マレーシアからの水の輸入が必要不可欠である。ジョホール海峡には、道路や鉄道の橋の横に、水道管が掛かっている。
シンガポールはマレーシアと上水道の供給を受ける契約を数十年単位で結んでいるが、近年、値上げを迫られている。そこでこれまで水の「自給率」を上げるためにいくつかの政策に取り組んできた。
具体的には、ダムの建設とともに貯水池の整備、海水の淡水化プラントの稼働、そして、下水処理水を高度に浄化した水である「NEWater(ニューウォーター)」プラントの稼働などである。これらの事業には日本企業も数多く参画しており、シンガポールの水不足解消に一役買っている。
「スマートシティ先進国」の産業
シンガポールは周辺諸国に比べ天然資源に恵まれないことから、古くから地の利を生かした「中継貿易」の拠点として発展してきた。
中継貿易とは、二国間の貿易に第三国(シンガポール)が仲立ちする貿易のことで、第三国は貿易品の通過による運賃や、荷役・若干の加工などで収入を得る。シンガポールにおける中継貿易は、中国系住民によって担われてきた。
マレーシアからの独立後は、輸出指向型の工業化を推し進め、「アジアNIEs」(新興工業経済地域)の一国と呼ばれるようになるまで経済は急成長した。特に、1960年代に開設された「ジュロン工業地域」は、石油化学工業をはじめとする各種工業が立地し、工業化を率いてきた。
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