公用語は4つあり、民族構成に合わせて中国語、マレー語、インド系のタミル語、そして英語である。英語が普及した背景には、異なる民族がコミュニケーションを図るのに便利だったという事情がある。シンガポール人が話す英語は独特の抑揚や言い回しがあることから、「シングリッシュ」とも称される。
◎日本との時差はなぜ1時間?
一般的に時差は、経度15度差で1時間とされる。シンガポールは東経105度付近に位置するので、この計算でいくと、東経135度の日本との時差は2時間差のはずである。しかし、両国の時差は1時間と、シンガポールの標準時は本来より1時間進んだ設定となっている。そのため、日本に暮らす私たちがシンガポールに行くと、日の出と日の入りが遅い印象をもつ。
ではなぜ、シンガポールの標準時は1時間進んでいるのだろうか。その理由の1つは、マレーシアの標準時に合わせたからだ。
前述の通り、シンガポールはマレーシア連邦の一州であったこと、また、独立後も両国間では人やモノの移動が活発であることから、マレーシアの標準時と合わせるのが好都合だったのだ。マレーシアは、東西に広い国土の標準時を1つに決めた際に、シンガポールよりも東部に位置する島嶼部の時刻を優先したといわれている。
別の理由に、金融市場として競合関係にある香港や上海の存在がある。中国は国土が広いが、全土で北京時間を使用していて標準時は1つ。日本との時差は1時間である。
つまり、株式市場が香港や上海よりも遅れて開いたのでは経済活動において不利益を被ると考えて、1時間早めて中国と同時刻にした、とする経済発展を重視するシンガポールらしい理由といえる。また、シンガポールは中国系住民が多いこともあり、中国とのつながりが強いことを示す一例だともいわれる。
「自然災害が少ない」2つの理由
東南アジアといえば、毎年のように火山の噴火、大地震の発生、それに伴う巨大津波の襲来、台風がもたらす暴風雨など自然の猛威にさいなまれている。その中にあって、実はシンガポールは自然災害が比較的少ない国である。
まず、火山の噴火や大地震の発生の要因には、プレート境界の存在がある。東南アジア地域のプレート境界は、見事にシンガポールを避けている。そのため、シンガポールは地震が少ない。
2004年のインドネシア・スマトラ島沖地震発生の際に、シンガポールでは揺れは感知したようだが、大きな被害は出ず、津波の襲来もなかった。
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