具体的には「ワールドビジネスサテライト」は経済報道らしく「新業態・ワークマンカラーズ発表」。生活に密着したニュースを報じる「news every.」「ズームイン!! サタデー」では、UNIQLOの新ブランドと併せて「物価高でもお手軽な値段で買えるオシャレなアパレル」。「DayDay.」「THE TIME,」「ひるおび」「めざましテレビ」といった情報番組では、街のトレンド情報として「銀座にオープンするワークマンの新店舗」を紹介している。
最後の「巧みなポイント」はと言うと…
・巧みな点その3:言葉がすべて具体的
ワークマン広報の巧みさ、最後は「言葉がすべて具体的であること」だ。新製品発表会では、新規参入の肌着も初披露された。この場でも土屋専務の言葉は明快だった。
ウェブメディア「Business Insider Japan」によると、土屋専務は発表会で肌着市場についてユニクロを念頭に「日本にはジャイアントがいる」と前置きし、次のように語ったという。
一見、企業として当たり前の受け答えのようにも見える。だが、実際には「伝統的大企業がなかなかできない応答」でもある。伝統的大企業であれば「他社のことは気にしていません」「すべてのお客様に支持されたい」といった「キレイゴト」を並べ、決して他社に言及しようとはしないだろう。
伝統的大企業のように「当たり障りのない言葉」を並べられても、記者は原稿にしづらいものだ。それゆえ「本音」を引き出すべく、試行錯誤しながら、質問を重ねることになる。だが、ワークマンのように当たり前のことを最初から明快に語ってくれると記者としてはありがたいし、好感を抱くものだ。
このように先駆的で盤石にも見えるワークマンの広報戦略。「一抹の不安」があるとすれば、前述のように一般紙を軽視していることだろう。近年の新聞購読者の大幅な減少、そして高齢化を鑑みれば、ワークマン、あるいはトヨタのように「引く手あまた」の企業から日経以外の新聞が「選ばれない」のは、当然かもしれない。
ワークマンの今後
だが「選ばれなかった側」には、確実に冷ややかな想いが蓄積しているはずだ。記事データベース「日経テレコン」で、ワークマンが今年、掲載された記事を検索すると、日経が朝刊だけで46記事もあるのに対し、朝日・読売・毎日・産経を足しても21記事に過ぎない。
ワークマンの業績が好調なうちは、何の問題もない。だが業績が大幅に悪化、あるいは不祥事が起きたとき、一般紙の論調はかなり厳しくなる懸念がある。そうなれば、テレビも新聞の論調に引きずられる可能性は十分にある。
私は元記者として、そしてPR戦略コンサルタントとして、マスコミ対策を「日経の一本足打法」から「5回に1回程度は他紙にも華を持たせる」関係への移行をお勧めしたい。他紙の「やる気」を喚気するだけではなく、日経も安穏としていられない状態となる。そうなれば、ワークマンの広報戦略は一層、隙がないものとなるのではないか。
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