わかりにくい10電力決算を整理すると? 「値上げ」「再稼働」次第で様変わり

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一方、四国電力は伊方原発3号機の審査が大詰めに差し掛かっている。早ければ6月中にも原子炉設置変更許可が与えられる見通し。ただ、地元同意や工事計画認可、使用前検査などの手続きを考えれば、再稼働は冬以降になりそうだ。住民らによる運転差し止め仮処分申し立ての行方にも左右される。

再稼働が来年度以降との前提に立てば、前期に約100億円あった燃料費調整制度のタイムラグ効果がほぼ全額はげ落ちるため、2015年度は経常減益の公算が大きい。

以上の電力会社の原発は加圧水型軽水炉(PWR)で、規制委審査が先行していた。これに対し、過酷事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)の原発は、比較的安全規制が厳しくされ、審査の申請も遅かった。結果的に審査の進捗も遅れている。審査で最大の関門となる基準地震動の策定が終わった原発はまだない。敷地内の破砕帯(断層)の活動性が疑われている原発もある。

2014年度決算を発表する、東電の廣瀬社長

BWRの中で先陣を切って審査を申請したのが、東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機だった。すでに審査会合は50回に及んでいるが、地質や地震動、重大事故対策などの審査が長引き、終了のメドがまったく立っていない。

地元の新潟県知事も再稼働は依然論外との立場であり、今期中の再稼働はないと考えるのが現実的だ。

東電の2014年度業績は、燃料安に伴う燃料費調整制度のタイムラグ効果が1080億円(2013年度は1340億円のマイナス効果)あったことなどから、経常益は前期比ほぼ倍増の2080億円と増益となった。2015年度はタイムラグ効果が前年度とほぼ同水準見込めるが、これまで緊急避難的に繰り延べてきた修繕費や諸経費が、反動で増える可能性が高く、若干の減益と見込むのが妥当だろう。

なお、東電は福島事故の賠償金を特別損失に計上することで今期も純利益は実質的には数千億円の巨額赤字が見込まれる。ただ、原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの交付金(立て替え金)によって、特損のほぼ全額が特別利益で補填されるため、最終黒字が維持される見通しだ。

活断層問題が浮上した北陸電

中部電力は2014年5月に実施した料金値上げの効果で、昨年度は4期ぶりの経常黒字となった。2015年度の会社予想も公表した。規制委が審査している浜岡原発4号機の、今年度中の再稼働はないと想定しているためだ。経常益は1300億円と、前期の602億円から一段の改善を見込む。燃料費調整制度のタイムラグ効果が前期の約100億円から今期は約800億円へ拡大することが主な要因だ。その効果を除けば、「利益水準は前期並み」(水野明久社長)となる。

浜岡原発4号機について中部電は、値上げ申請時には2016年1月からの再稼働を想定していた。しかし、同原発は南海トラフ巨大地震などの想定震源域にあるだけに、安全審査や地元同意の行方は極めて渾沌としており、こちらも再稼働を見通すことは非常に困難だ。

原発敷地内に活断層が存在する疑いが新たに浮上したのが北陸電力だ。規制委の有識者会合は5月13日、志賀原発敷地内の断層が「活断層である可能性を否定できない」との見解で一致した。今後、規制委が活断層だと断定すれば、真上に建屋のある志賀原発1号機は廃炉を迫られる。活断層の真上に冷却水を取り込む配管が交差する同2号機も、少なくとも大規模な対策工事が必要となる方向だ。

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