わかりにくい10電力決算を整理すると? 「値上げ」「再稼働」次第で様変わり

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司法によって再稼働に「待った」をかけられたのが関西電力だ。同社は今年2月に高浜原発3、4号機の規制委審査で、事実上の合格証に当たる原子炉設置変更許可を取得し、11月からの再稼働を想定していた。ところが4月14日、福井地方裁判所において、両機の運転差し止めの仮処分命令を求める地元住民らの申し立てが認められた。関電側は福井地裁に不服申し立てを行ったが、地裁の決定が却下されない限り、高浜原発は再稼働できない。

大阪市にある関電本店(撮影:尾形文繁)

関電は2013年5月に電気料金値上げを行った際、高浜3、4号機の2013年7月からの再稼働と、当時稼働していた大飯原発3、4号機の稼働継続を前提としていた。それらが実現しなかった結果、火力燃料費の増加などで2014年度まで4期連続の経常赤字を計上した。

2014年末には料金再値上げを申請したが、審査で値上げ幅が圧縮され、実施日も想定より2カ月遅れの2015年6月からとなった。

しかも、再値上げの前提とした高浜3、4号機の再稼働が、仮処分命令によって一段と不透明に。大飯についても規制委審査は進捗しているが、耐震対策工事に相当な期間を要し、再稼働は2016年度以降となる。

そのため、関電の2015年度の黒字化はかなり微妙に。当初は家庭向けと企業向けを合わせた再値上げで年間1200億円程度、高浜の11月からの再稼働で790億円程度の収益改善効果が見込まれていた。その通り行けば、今年度は1000億円近い経常黒字へ転換する可能性が十分あった。

ところが、再値上げの効果は値上げ幅の圧縮などで1000億円を下回る模様。さらに、高浜の今期中の再稼働も仮処分によって読めなくなっている。関電の八木誠社長は4月の決算会見で「2015年度の黒字化が見えているわけではまったくない」と述べる一方、「5期連続の赤字は何としても避けたい」とも話している。黒字化を確実にするには、より徹底した経営効率化とコスト圧縮が不可欠の状況だ。

再値上げで黒字化の北海道

4期連続赤字となった残る1社、北海道電力。今年度は再値上げが通期寄与するため、それだけでも750億円程度の増収効果が見込める。ただ、前期に約200億円あった燃料費調整制度のタイムラグ効果(燃料価格の変動が数カ月遅れて料金に反映されることに伴う差益)が、今期はほぼ全額はげ落ちる見込みで、さらに修繕費や諸経費を繰り延べしてきた反動増として240億円程度が減益要因となる。

あとは、規制委が審査を続ける泊原発の再稼働の有無が業績を左右する。北電は泊原発1~3号機が、今年11月から2016年3月にかけて順次再稼働すると再値上げ申請時に想定していた。もし想定通りなら、今年度中に数百億円程度の収益改善効果が見込まれる。しかし、規制委審査は基準地震動策定で難航し、終了のメドが依然立たない。そのため、今年度の経常利益は黒字化しても、200億~300億円程度にとどまりそうだ。

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