「高浜原子力発電所3、4号機は2015年2月に原子力規制委員会から設置変更許可を得たプラントであり、福井地方裁判所には(運転差し止め)仮処分申し立ての却下を求めるとともに、発電所の安全性が確保されていることを科学的、専門的見地から具体的に主張・立証してきたが、理解されなかったことは誠に遺憾であり、到底承服できない」――関西電力の八木誠社長は4月17日の電気事業連合会会長の定例会見でそう語った。
そして同日午後、関電は福井地裁に対し、仮処分決定を不服として異議と執行停止を申し立てた。今後、福井地裁は仮処分決定時とは異なる裁判官(14日に仮処分決定を出した樋口英明裁判長はすでに名古屋家庭裁判所に異動)の下で異議の審理を行う見込み。異議審に何カ月かかるか定かではないが、結論が出るまでの間に仮処分の執行停止が認められれば、再稼働は可能。異議が却下されれば、関電は高等裁判所に抗告を申し立てる見込みだ。
関電社長「2015年度は赤字と再々値上げを回避」
八木社長は「再稼働への影響を最小限にとどめるべく、不服が認められるよう立証していく」と話すが、関電が今年11月と想定する再稼働時期は一段と不透明感を増している。関電は現在申請中の電気料金再値上げの審査が長引き、当初予定していた4月の値上げ実施は6月に延びる見通し。さらに再稼働も遅れれば、「収支は厳しくなる」(八木氏)。
ただ、2015年度については、たとえ再稼働がなくても、修繕費の繰り延べや一過性の収支改善措置によって「5期連続赤字は何としても避けたい」と八木氏は言う。料金についても、2015年度中は再々値上げ申請を見送る方針だ。2014年末で5200億円を超す繰り延べ税金資産の取り崩しリスクについては、「(会計士は)仮処分だけで判断するものではない」とし、当面は回避できるとの見通しを示した。とはいえ、もし長期的に再稼働が不可能になれば、「最大限の効率化のうえで存続が危ぶまれる場合には、改めて総合的に判断したい」とも述べ、再々値上げ申請の可能性を示唆している。
関電側は、福井地裁の仮処分命令の内容には「事実誤認がある」(八木氏)と主張する。たとえば、同地裁は「基準地震動を下回る地震によって外部電源が断たれ、炉心損傷に至る危険がある」としているが、関電は「もし外部電源が断たれても、非常用電源によって安全に電源を供給できる」(同)と反論。
また、耐震性および放射能防御機能の高い免震重要棟の設置に実質的な猶予期間が設けられていることについて、同地裁は「かような規制方法に合理性がない」と指摘。これに対して関電側は、「免震重要棟の建設はするが、それができるまでの間に耐震機能を有する(代替の)緊急時対策所を高浜1、2号機に設置して、規制委の許可を得ている」と反論する。
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