そして八木氏は、「世界で最も厳しい水準の新規制基準に基づいて安全対策を行い、1年以上にわたって規制委の多角的な審査を受けており、そうしたことをしっかり主張していく」と語る。
地裁の仮処分については、規制委の田中俊一委員長も15日の定例会見で「事実誤認」に言及している。たとえば、地裁の決定文では使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性を「Bクラス」としているが、実際は「(最高の)Sクラス」であると指摘。また、地裁は外部電源の耐震性がSクラスでないことを問題視しているが、田中委員長は「外部電源は商用電源なのでCクラスだが、非常用電源(ディーゼル発電機など)はSクラスだ」とし、安全性に問題はないと主張している。
地震動の基準について見解のわかれ
また、仮処分決定では、基準地震動(想定する最大の地震動)について、「理論面でも信頼性を失っている」とした。その理由として、活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授の新聞インタビュー記事を引用し、現在の基準地震動は「計算で出た一番大きな揺れの値」ではなく、「地震の平均像を基礎」としていると指摘する。
これに対して田中委員長は、15日の定例会見で「判決の中では平均でやっているということで、入倉先生の引用があるが、入倉先生はそんなことはないと、ほかで語っているようなので、それも一つの事実誤認」と会見で反論。翌日の国会答弁でも、「基準地震動は決して平均ではなくて、いろいろな特殊事情、地域の特殊性を踏まえ、最大限の不確実性を考慮して、最大の地震動を設定している」と説明している。
福井地裁は「新規制基準は緩やかにすぎ、合理性を欠く」としたが、田中委員長は「私たちの取り組みが理解されていない」「新規制基準は世界最高レベルとして国際的に認知されている」と主張。「今の時点で新規制基準を変える必要はない」と述べている。
一方、こうした関電、規制委の「事実誤認」追及に対し、住民弁護団側は反発を強めている。
弁護団の共同代表を務める河合弘之弁護士は、高浜の仮処分決定について「高浜を止めるだけでなく、新規制基準による審査手続きの不合理性を指摘し、全国の原発再稼働にストップをかけることに重要な成果がある」としたうえで、「原発推進派は今決定に泥を塗って、その社会的効果を薄めようとしている」と批判する。
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