高浜原発、仮処分の「事実誤認」を巡る応酬 関電・規制委と住民弁護団でバトル

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住民側の弁護団の共同代表を務める河合弘之弁護士。

そして関電や規制委による「事実誤認」の指摘について、具体的に反論している。使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性について、「給水」ではなく「冷却」設備の耐震性がBクラスであることと混同した点を認めつつ、関電のあいまいな説明が原因であり、冷却設備の耐震性がBクラスであること自体も問題だと主張する。

「それよりも、基準地震動が信頼性を欠いている点や、使用済み核燃料プールが堅固な施設で囲い込まれていない点、免震重要棟の設置を実質的に猶予している点など、もっと根本的な問題には答えもしない」と河合氏は非難する。

基準地震動を「地震の平均像」が前提と考えるのは曲解との指摘についても、「入倉氏は新聞記事自体が間違いとは言っておらず、曲解引用の意味がわからない」(中野宏典弁護士)と反論。「昨年11月の大飯・高浜原発に関する大津地裁仮処分(稼働差し止め申し立ては却下)でも、地震の平均像を基にした基準地震動の合理性に疑問を呈している」と、福井地裁だけの判断ではないことを強調する。

川内原発では住民側が事実誤認を指摘

また、福井地裁は原発の「ゼロリスクを要求している」との指摘について弁護団側は、「決定文では基準地震動の策定基準を見直すことや、使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込むことなど、脆弱性を解消する具体的な対策を挙げており、ゼロリスクを求めているわけではない」(海渡雄一弁護士)と指摘。「裁判官特殊論」についても、そもそも3人の裁判官から成る合議体による決定であり、伊方原発最高裁判決(1992年)の趣旨から新規制基準の不合理性を指摘しているのであって、これまでの裁判を踏襲したものだと反論している。

22日の鹿児島地裁による川内原発仮処分(稼働差し止め申し立て却下)では、逆に住民弁護団側が地裁決定の事実誤認を指摘している。たとえば、川内原発の火山対策において、マグマ溜まりの状況から破局噴火の可能性は十分に小さいとしている点について、「マグマ溜まりの状況を的確に調査する手法は確立されておらず、決定は事実誤認である」としている。実際、規制委の火山対策審査では、火山学の専門家の多くが噴火予知などの点で正当性に疑義を投げ掛けており、裁判でも最大の対立点とされてきた。

高浜にしろ、川内にしろ、今後の裁判の行方は定かではない。住民の原発再稼働差し止め裁判と仮処分申し立ては、規制委が設置変更許可した原発から順次全国的に広がる見通し。今後も各地で異なる判断が出る可能性はある。裁判は原告と被告の闘いであるが、原発差し止め訴訟は原発のリスクや安全性が最大の争点であり、全国民にかかわる問題でもある。各裁判所の判断だけでなく、双方の主張を世論がどう考えるかが重要といえる。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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