わかりにくい10電力決算を整理すると? 「値上げ」「再稼働」次第で様変わり

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福島第一原発で黙禱をする東電の廣瀬直己社長(左)ら(2015年3月撮影:雑誌協会代表)

大手電力10社の2014年度決算は、明暗が分かれる形となった。

もともと原子力発電所への依存度が高く、その再稼働が会社想定より遅れている関西、九州、北海道の3電力が4期連続の経常赤字に。一方、中部電力が昨年5月の電気料金値上げで4年ぶりに経常黒字へ転じるなど、東京電力を含む7電力が経常黒字を確保した。

では、今2015年度の業績はどうなるのか。今期の利益予想については、中部電力、沖縄電力を除く8社が開示を見送っている。主な理由は、原発の再稼働時期のメドが立たず、合理的に利益を予想できないためだ。そこで、各社への個別取材も踏まえ、原発再稼働の行方とともに、各社の今期業績見通しを考えてみたい。

原発再稼働1番手と目されているのが、九州電力の川内原発。原子力規制委員会による新規制基準適合性検査を経た原発として初めて、今夏にも再稼働する見込みだ。同1号機が3月に工事計画認可を受け使用前検査に入っており、九電は4月末段階で「7月中旬の再稼働を目標に最大限努力する」(瓜生道明社長)としている。同2号機についても、早期の工事計画認可と使用前検査入りを目指す。

川内再稼働、遅れれば赤字

ただ、会社の目標どおりに再稼働できる保証はない。保安規定はまだ認可されておらず、使用前検査が長引いて、再稼働が下期以降にずれ込む可能性は十分ある。同じく審査中の玄海原発3、4号機についても、川内再稼働への対応を優先していることや、地元同意を含めた今後の手続きを考えれば、2016年度以降へ遅れる公算はかなり高い。

鹿児島県にある川内原発(撮影:尾形文繁)

九電は2013年5月からの電気料金値上げの前提として、川内1、2号機と玄海4号機が2013年、玄海3号機が2014年に再稼働すると想定して原価計算していた。だが、再稼働は想定より大幅に遅れ、代替の火力燃料費が膨らんだ結果、経常赤字を計上し続けている。

2015年度について瓜生社長は、「仮に玄海原発の2015年度中の再稼働がなくても、川内原発の再稼働と経営効率化で(5期ぶりの)黒字化を実現したい」と話す。川内再稼働による収益改善効果について九電は、1カ月当たり2基で150億円程度を見込んでおり、同1、2号機が上期末ごろから再稼働すれば、小幅ながら経常黒字に転じる可能性が高い。だが、大きく遅れれば、赤字継続は必至。2015年3月末の連結ベースの自己資本比率は9.0%と1ケタ台まで落ち込んでおり、再値上げを含めて財務基盤の補強策が必要となってこよう。

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