先生もわかってない?「読書感想文」本質的な意義 自分の考えを言葉にする快感を知るチャンスだ

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体験ではなく、意見を、書く。――そのような練習が、日本の学校教育だと、先生が意識的にやらせない限り、少なくなってしまっているのです。

「自分の考えを言葉にする快感」を知るチャンス

ですが、ここで少し考えてみてください。

起こったことではなく、考えたことを、書く。それは、実は読書感想文のなかでは可能になるのです。なぜなら読書感想文は「本を読む」という体験さえあれば、どんな考えを書いてもいいからです。

たとえば私たちは戦争を体験していないし、戦争の話を当事者から聞く機会がなくても、本を読めば戦争についての考えを書くことができる。

あるいは社会についておかしいと思うこと、学校で変だと感じたこと、自分がひそかに考えていることの言語化を、本という媒体を通せば、実は体験を書くよりももっと自由に書くことができるのです。

それは間違いなく読書感想文の面白さのひとつです。体験してなくても、自分の意見を自由に書ける。

本はこの世に大量にありますから、学生さんが興味を持つトピックスならば大抵関連書籍があります。その関連書籍を読んで考えたことを書けばいい。

そうして、読書感想文は、体験の描写ではなく、自分の意見の記述を可能にするのです。

もちろん、言語化することそのものが面白い、と思える学生さんは一部でしょう。ふつうはそういうふうに感じられない方が大多数だと思います。ですが、作文を書く中で「自分はこんなことを考えていたのか!」とわかる瞬間が一回でもあれば、しめたものです。

自分の考えを言葉にする快感を、知るチャンス。それが読書感想文の面白さそのものなのです。

「なんで読書感想文なんて書かなきゃいけないんだろう」と思う学生さんはたくさんいるでしょうが。実は学校教育のなかで、自分の体験していないことについて意見や思っていることを言語化して書ける機会は、そうそうない。――と思うと、読書感想文の面白さはまさにここにあるのだとわかってもらえるでしょうか。

読書感想文がもたらす能力は、案外、社会に出てから貴重かもしれませんよ!

三宅 香帆 文芸評論家

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みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)『それを読むたび思い出す』(青土社)など著書多数)。

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