会いたい人にまた会うための「貸し」の作り方 貨幣経済的に「交換」できないことに価値がある

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よい関係性を作るには、相手がいい人だったり、公益性が高くて社会に価値を提供できそうな人だったりするなら、見返りは要求せず、惜しみなく好意を与えることだと思います。

返さなくていいから、「貸し」を作っておくという発想です。

貨幣経済の発端は、古代の物々交換だったと言われていますが、実は、それを証明する歴史的な史料はありません。

考えてみれば、等価交換できるものはそうありません。現実的には、羊1頭をもらって、その時には何もお返ししないけれど、「あの人には貸しがあるから、いつか返さなきゃ」と思う。だから、また会うというところではないでしょうか。

貸し借りによって人間関係が続く

『負債論』のデヴィッド・グレーバーは、その場で精算してしまうと、次に会う用事がなくなるので、ちょっと貸し借りを作ること自体が、人間関係を続けさせる1つの軸になっていると言いました。

僕は、3拠点生活で福井に住んでいますが、このことがとてもよくわかります。

ご近所さんは、頼めば何でもやってくれます。網戸が壊れると、建具店のお兄ちゃんがタダで直してくれる。その代わり、心の片隅に「借りができた」という気持ちがずっと残るので、いつか彼に何か頼まれたら、やってあげようと思うのです。

つねに貨幣経済的に交換しなければ気が済まないというのは、われわれにとっては呪いだと言ってよいでしょう。交換できないところに価値があるのです。

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