中国人が「日本の医療」を爆買い?関心高まる背景 巨大ECアリババが日中医療ツーリズムに参入

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中国で医療サービスの予約プラットフォームを手掛けるGLZHealth(オリーブ・ブランチ・ヘルス)の鄧瑰瑋CEOは、筆者の疑問に対し「たしかに美容医療と言えば韓国のイメージが強いですが、日本の美容医療も自然な仕上がりになると定評があります。また、海外で医療サービスを受けようとする人の多くは、旅行先としての魅力も重視しています」と答えた。

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GLZHealth(オリーブ・ブランチ・ヘルス)の鄧瑰瑋CEO(写真:筆者撮影)

同社は香港、マカオ、東南アジアなどの医療機関と提携し、中国人の予約を受け付けたり旅先での診療のサポートを行っている。病気の治療ではなくワクチンや検診など予防医療を対象としているため、医療サービスの質に加え、中国からの近さや観光資源の魅力が重要な競争力になるという。

アリババグループの日本法人「アリババ株式会社」は、GLZ社と連携して今年9月に日中越境医療ツーリズム事業を始める。

日本のクリニックやヘルスケア企業がアリババグループのECプラットフォーム「天猫国際(Tモールグローバル)」に出店し、中国人消費者の予約を受け付ける仕組みで、アリババ日本法人とGLZ社が店舗運営や中国人消費者のサポートを行う。

日本の人間ドックは、サービスの質が高い

鄧CEOは、日本の医療サービスで特に競争力があるのが、人間ドック、がんリスク検査、ワクチンなどの予防医療分野だと分析する。自身も日本で人間ドックを受けたことがあり、「人間ドックの検査メニューや設備は国によって大きな差はありません。ただ、日本は全体のサービスの流れやおもてなしの姿勢がすばらしい。検査結果を踏まえより健康になるための助言が得られ、よい体験だと思いました」と振り返る。

アリババ
アリババ株式会社とGLZHealthが連携し日中越境ツーリズム事業を開始。左はアリババ株式会社の代表取締役社長CEO 岡田 聡良氏(写真:筆者撮影)

美容医療も伸びしろが大きい。デロイトトーマツの中国医療美容業界2023年レポートは、中国の美容医療市場は2023年に前年比20%増の2000億元(約4兆円)に達し、2024年以降も年15%の成長が続くと試算する。また、昨年から今年にかけて施術を受けたか予定している人の16%が、年内に海外での施術を検討している。

天猫国際にとっては、海外向け越境ECでモノ以外を取り扱う初の取り組みとなるが、医療ツーリズム自体は2018年から参入準備を進めていたという。

天猫国際グローバル事業開発の趙⼽ゼネラルマネージャーは「海外旅行に出かける中国人が増え、医療ツーリズムの需要も高まっていました。2019年末には韓国の医療事業者を回って詰めの協議をしていたのですが、その直後に感染が広がり、プロジェクトが3年間止まっていたのです」と説明した。

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天猫国際グローバル事業開発の趙⼽ゼネラルマネージャー(写真:筆者撮影)
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