近畿日本ツーリスト、コロナ不正の呆れた幕引き 受託事業の6分の1で「不正請求」が発生の実態

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米田社長は6月27日に開催されたKNT-CTHDの親会社・近鉄グループホールディングスの定時株主総会で取締役に就任した。従来予定されていた近鉄グループHDの社長就任はなくなったものの、取締役の席は確保した形だ。

「詐欺事件で社員が逮捕されており、行政処分レベルの話ではない。米田社長ら経営幹部の処分は甘すぎる」と競合の幹部は指摘する。

KNT-CTHDは、コンプライアンス委員会や同改革本部の設置やコーポレートガバナンスに関する業務改革、企業風土改革など6つの対策を打ち出した。だが、不正を見抜けず、ガバナンス体制をこれまで構築してこなかった現経営体制のままで果たして改革を進められるのだろうか。

「報酬返納は処分が軽すぎる」

「今回の件で監査役が処分を受けていることから、会社の監督責任を問われている可能性が高い。グループガバナンスの観点から考えると管理側のKNT-CTHDの社長や専務らの報酬返納は、社長が辞任した近ツーと比べると軽すぎる」と青山学院大学の八田進二名誉教授はみる。同氏は、企業監査やガバナンスを専門とし、多くの企業で社外役員を務めてきた。

「(米田氏の退任についても)議論は相当した。だが、(髙浦、米田両社長)2人が一度に退任して、新体制をスタートさせるのは困難。私が新体制を確立させて安定走行を始めるまで監督したい」と米田社長は説明する。

そもそもKNT-CTHDの取締役体制は、約4割が親会社である近鉄グループHD出身者だ。ガバナンス強化やコンプライアンスを徹底するには自浄作用が働きにくい構造と言える。コーポレートガバナンスを専門とする社外役員を招聘するなどの対応が求められるだろう。

また調査報告書については、現在同社の元社員らが起訴されていることなどから、多くの部分が黒塗りとなっており、中には64ページ分が非開示措置(開示されている資料は計88ページ)になっている部分もある。事件の核心は明らかにされておらず、同社によれば今後の公開予定はないという。

社員4人が逮捕された異例のコロナ不正劇は、その全貌が明らかにされないまま、早期の幕引きが図られようとしている。

星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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