近畿日本ツーリスト、コロナ不正の呆れた幕引き 受託事業の6分の1で「不正請求」が発生の実態

拡大
縮小

まず調査報告書では、驚くべき数字が明らかになった。調査委員会が本社内点検を経て、受託事業と判断した3152件(2020年度〜2022年度)のうち、自治体などへの請求数量と実際の稼働数量に差異があった案件は524件に及んだのだ。受託事業のおよそ6分の1で不正請求が発生していた計算になる。

近ツー各支店および個社の販売実績や毎月の販売実績は同社の取締役会などで報告されていた。そのため、調査委員会は髙浦社長ら近ツーの経営幹部は、「BPO事業の業績販売実態を把握することができたと思われる」と指摘している。

会見で説明をする近ツーの髙浦社長(撮影:梅谷秀司)

それにもかかわらず、不正請求を把握できなかった理由について、髙浦社長は、「コロナ対策事業が(自治体などから契約を)延長された事業が多く、(事業の詳細までは)つかみきれなかった。業績が過大請求によって伸びたとは思っていなかった」と会見で釈明をした。

現場の問題を進言する風土が欠如

なぜここまで過大請求が膨らんでしまったのか。調査報告書では、その原因として、近ツーの「①利益追求の指向②各人の行為の妥当性・適法性に対する希薄な意識③管理体制の脆弱性④階層間の正確な意思疎通や現場の問題を進言する風土が欠如した全社的な企業カルチャー」を挙げている。

さかのぼること3年前。2020年に新型コロナウイルスが蔓延し始め、訪日外国人の入国制限や緊急事態宣言により、旅行業は大きな打撃を受けた。近ツーは遅くとも2020年6月以降から自治体からのコロナ受注などに注力し始めた。

2021年10月に開催された同社の経営会議で、2021年度下半期(2021年10月〜2022年3月)の重要推進事項として、「ワクチン接種支援業務などの公務BPO事業の売上総利益最大化」が掲げられた。

実際、ワクチン接種支援などのBPO事業が同社の業績を下支えしていたことは間違いない。同社の2022年度の業績は、本業の旅行事業は2019年度のの6割程度でしかないにもかかわらず、純利益は117億円とこれまでの最高益45億円(2015年12月期)を倍以上も上回った。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT