「読書感想文を放置する子ども」に親ができる助言 夏休みもそろそろ終盤…少しでも手助けするには?

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

なぜ私がこんなに細かく具体的に挙げよというのか。それは、感想のオリジナリティは「細かさ」に宿るからです。

たとえば本の感想が「面白かった」としか書けないという悩みは、本の「どこが」面白かったのか考えていくなかで、解消されていきます。この本の「この行動が」自分と違う価値観に基づいていて驚いた、「この台詞が」自分にも言われているようで感動した、「このキャラクターが」いちばん印象に残った。そんなふうに面白かった箇所を細分化していくと、どんどん自分の言葉が生まれていきます。

たとえば「考えさせられた」という言葉しか出てこないときも、「どこが?」「どんなふうに?」と細かく具体的に深掘りしていくことによって、言語化がうまくいくことが多いのです。

「細分化」することで言語化しやすくなる

細分化さえできれば、語彙力なんてなくても、言葉が出てきやすくなる。なぜなら言語化というと、何かをそっくりそのまま言い換えることのように思われますが、実際はそうではないから。言語化とは、「どこが」どうだったのかを、細分化してそれぞれを言葉にしていく作業なのです。

もちろん、語彙力があるに越したことはありません。本を読んでいると、たくさんの語彙が手に入って、それによって自分の使える言葉が増えていくという経験は絶対に存在します。

しかし同時に、語彙力さえあれば言語化がうまくいくというものではない、ということもまた事実。語彙をたくさん知っていても、その語彙を使うタイミングがわからなければ、やっぱり言語化はうまくいきません。

言語化とは、細分化である。自分の言いたいことを細かく掘り下げていくことで、自分の言葉が生まれてくる。そのことをぜひ、覚えてみてください。

もしお子さんの読書感想文を指導していて、言葉が出てこないタイミングがあったら。ぜひ、どこに面白さを感じたのか、付箋を貼ってもらい、その付箋を貼った箇所について詳しく説明してもらいましょう。そのなかで言葉が出てくるようになります。どういう言葉が自分の感情を説明するのに適切なのか、考える訓練を積めばいいんです。

細かく、具体的に。そのことを意識して、ぜひ読書感想文をお子さんと一緒に楽しんでみてくださいね。

三宅 香帆 文芸評論家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)『それを読むたび思い出す』(青土社)など著書多数)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事