ドラマ見逃し配信「○万回突破」が続出するウラ側 視聴率に代わる新指標をどこまで信じていい?

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そんな「視聴者の行動にも、ドラマというジャンルにも合わない視聴率という指標だけで酷評されてしまう」というやられっ放しの状態を唯一変えられるのが、配信再生数の公表。いまだにドラマの視聴率だけを報じ、それを理由に酷評する記事が多い中、「これだけ見られていますよ」という貴重な反論材料となっているのです。

「視聴率速報」だけでは限界だった

無料の配信再生数でもう1つ注目しておきたいのが、主に23時~26時台で放送されている深夜ドラマの躍進。現在放送されている深夜帯の作品で、下記のように配信再生数が報じられました。

「『around1/4』見逃し配信視聴数でABCテレビドラマ史上最高の記録を樹立」(ABC・テレビ朝日系)
「『癒やしのお隣さんには秘密がある』TVer100万再生超え 小関裕太のストーカー怪演ぶりが話題に」(日本テレビ系)
「生田斗真主演『警部補ダイマジン』 同枠最速で見逃し100万回再生の反響『なかなかのダークヒーローっぷり』」(テレビ朝日系)
「松村北斗&西畑大吾主演『ノッキンオン・ロックドドア』初回見逃し配信100万再生を突破」(テレビ朝日系)
「菊池風磨主演ドラマ『ウソ婚』、第2話の見逃し配信が異例の210万再生突破」(カンテレ・フジテレビ系)

前述したゴールデン・プライム帯に迫る配信再生数を記録していることがわかるのではないでしょうか。“深夜帯”は、あくまで放送に限ったものであり、配信再生は時間不問。宣伝や予算などの規模こそゴールデン・プライム帯に劣るものの、「配信再生数なら深夜帯の作品でも十分勝負できる」ことが証明されつつあるのです。たとえば、2018年に深夜帯ながら社会現象となった「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)が今放送されていたら、配信再生数では「VIVANT」を上回っていたかもしれません。

現状の課題は、無料の配信再生数が右肩上がりで増えている一方で、収益性が十分とは言えないこと。「まだまだ視聴率ベースの放送収入に頼らざるを得ない」という現実があり、配信広告の単価アップなどが求められていくでしょう。

最後にもう1つ言及しておきたいのは、無料の配信再生数を報じるネットメディアの思惑。これまでスポーツ紙系、週刊誌系、エンタメ専門系を中心にネットメディアの多くは、シンプルな視聴率の速報記事を報じ続けてきました。

これらの編集部にとって視聴率の速報記事は、簡単に作成できる上に一定のPVを稼げる便利なもの。しかし、配信や録画での視聴が定着するなど視聴率に対する信頼性が失われ、コメント欄に読者から反発の声が書き込まれるなど、その結果だけを速報することにメディアとしての限界が生じていました。

その点、テレビ局から公表される配信再生数は記事化が簡単な上に、視聴率の速報記事だけでは足りない情報が補足できバランスが取れるため、ネットメディアにとってうってつけのデータ。テレビ局とネットメディアの両方にメリットがある以上、今後も配信再生数の記事は量産されていくでしょう。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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