ドラマ見逃し配信「○万回突破」が続出するウラ側 視聴率に代わる新指標をどこまで信じていい?

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各局や各作品でこれだけ算出方法に違いが見られ、たとえば同じ「100万回」でも同列には扱いづらいところがあるのです。

各局系列の有料会員は含まれず

さらに、そもそもこれらの数値は無料見逃し配信の再生数であり、各局系列の有料動画配信サービスは含まれていません。TBSとテレビ東京はU-NEXT、日本テレビはHulu、フジテレビはFOD、テレビ朝日はTELASAの有料会員は、基本的に放送中のドラマを全話いつでも見られますが、その配信再生数は含まれていないのです。

当然ながらこれらの有料会員は、放送後1週間しか見られないTVerなどの無料配信を再生する必要性はありません。また、各局の有料会員数にはバラつきがあるだけに、報じられている無料の配信再生数は「スタートの時点から基準が違う」という比べづらい指標なのです(有料会員数の多いU-NEXTのTBSとテレビ東京、Huluの日本テレビは、TVerなどの無料配信再生数では不利)。

今後、配信再生数という指標を公明正大なものにしていくのなら、無料の配信再生数と有料会員の配信再生数を同時に発表し、比較しやすいように合算することが求められるのではないでしょうか。

配信再生数は、これだけさまざまな算出方法がある上に、それ以前に「全話いつでも見られる」有料会員の数が違う。そのため各局内の評価基準も報じられる数字通りではなく、ドラマ枠や作品ごとに異なるようです。これらの理由から、現時点での配信再生数にまつわる記事は「参考程度で額面通りには受け取れない」のが実情と言っていいでしょう。

このように書くと、「テレビ局は都合のいい数字ばかり公表してずるいのではないか」と思うかもしれませんが、このような方法を採るに至った背景があります。これまでドラマの制作現場は、バラエティなど他ジャンルの番組と比べて不利な戦いを強いられてきました。

ドラマは「質の高い作品や、熱心なファンがいる作品ほど録画されてしまう」「ドラマだけ見逃し配信の視聴が飛躍的に増えている」などの理由から視聴率が下がり続け、それなりに見られているにもかかわらず作品数が減少。視聴率を過去の作品と比べて「最低記録更新」「爆死」などと酷評記事を書くネットメディアが多く、スタッフとキャストを悩ませ続けていました。

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