新神宮球場の「屋根なし」計画案に不安が募るワケ 整備費圧縮の結果、後利用が難しい新国立競技場

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神宮球場(2022年7月撮影)(写真:日刊スポーツ)

日本は2010年、国内総生産(GDP)で中国に抜かれ世界第3位に。昨今は円安が進み、コロナ禍が明けた今、日本の安さを求め海外からインバウンド客が詰め寄せている。日本人がブランド品を求めて海外を飛び回っていた時代は、今は昔だ。

東京で生活していても、どこか世界に取り残されつつあるという不安がまとわりつく。東京の文化が集積する青山地域にある「明治神宮外苑」の再開発が反対運動に揺れているのを見ると、複雑な心境にもなる。

ザハ案の白紙撤回で冷暖房がなくなった新国立競技場

8年前、同地域で同じような問題が起きた。英建築家の故ザハ・ハディド氏が設計を手がけた新国立競技場の整備計画が、国論を二分する騒動となった。計画当初は約1300億円と試算されていた整備費が3000億円超にまで膨れ上がり、メディアを中心に批判の渦が巻いた。結局、15年7月17日に安倍晋三首相(当時)が白紙撤回を決定した。

当時、私はこの問題の取材に走り回っていた。内閣官房の担当官僚や日本スポーツ振興センター(JSC)の担当者を連日、夜討ち取材し、ザハ事務所の担当者に何度も会って話を聞いた。

整備費高騰の原因にもなった開閉式の屋根だが、一方で、夢のある計画でもあった。冷暖房を完備した全天候型の施設で、スポーツや音楽イベントだけでなく東京モーターショーのような展示会や国際会議を招致する、単なるスタジアムではない、世界に例を見ないコンベンションセンターの建設を目指していた。

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