「電子ピアノ」の売れ筋が特需を経てさらに変化 初心者向けニーズ続く中、高価格帯商品が脚光
特需と半導体不足による品不足が相まって、電子ピアノはここ数年、品薄状態が続いた。需給逼迫は2023年初頭頃から解消している。しかし、メーカー各社によれば、電子ピアノ人気は依然として高い。
電子ピアノでは、楽器メーカーのヤマハ、ローランド、河合楽器製作所に加えて、「Gショック」などの腕時計で知られるカシオ計算機のシェアが世界的に高い。この4社の電子ピアノの売上高をグラフにした(ヤマハについては電子楽器の売上高)。
ヤマハは規模が大きいため、競合よりも半導体不足で苦しんだが、電子楽器の売り上げは2019年度から2022年度にかけて約1.2倍になった。河合楽器、ローランドはいずれも、同期間で電子ピアノの売り上げが1.7倍に。カシオも1.2倍、と各社ともコロナ禍で大躍進していることがわかる。
目覚めたニーズはそのまま続く
2023年度の予想については、巣ごもり特需はなくなり、旅行や外食などに消費が向かう、というのが各社共通の見立て。しかしそれでも、コロナ禍の時と同じくらいの高水準を維持する見通しとなっている。
「コロナで目覚めた新たな電子ピアノ需要はそのまま維持されている。そのため、世界的に需要は高止まり状態だ」(ローランド)
通常だと電子ピアノは、子どもの教育向け、あるいは子ども時代にピアノを習っていた人が大人になり、再度弾きたくなった際に購入する場合が多い。後者のパターンの潜在顧客を、楽器メーカーは「休眠層」と呼ぶ。楽器業界でとくに重視されている顧客層だ。
コロナ禍では、「休眠層」が活発化したことに加えて、初めてピアノを手にし、演奏する大人もたくさん現れた。楽器を手に取る「休眠層」の増加には先食い的な側面があるが、大人の初心者需要については、コロナ禍で顕在化した新たな市場といえる。
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