長岡花火「0泊2日」弾丸ツアーで見たバス事情 一大イベントを支える高速道路とツアーバス

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長岡花火は、バスツアーだけでなくマイカーでやってくる観客も多いので、レジの行列の何割かは「花火帰り」の観光客であろう。ここで25分の休憩を取り、さらに関越道最終の休憩地三芳PAで30分休息をし、空がかなり明るくなった午前4時45分、新宿駅西口のロータリーの一角にバスは戻った。

今回の高速道路の走行距離は、往復477km。休憩時間も含む高速道路上の滞在時間は、8時間45分だった。ちなみにこのツアーの参加費は、2万9000円。有料席代(イス席)が3500円で、それに夕飯用の幕の内弁当が付くので、バス代金は実質2万5000円程度という計算になる。

花火大会の隆盛とそれを支える高速道路

日本一と称され、100万人もの観客を集めるビッグイベントである長岡花火。同行した添乗員に聞いたところ、クラブツーリズムだけで150台ものバスが、この花火大会のツアーで稼働しているという。

長岡市のクラブツーリズム専用のバス駐車場の様子(筆者撮影)

会場ではHISや阪急交通社、読売旅行など数多くのツアー客も見かけたので、全部合わせると500台を超すバスが高速道路を疾駆して長岡へ集まってきていたことだろう。そう考えると、巨大イベントが高速道路とその道路を運行する多くのバスおよび運行スタッフに支えられていることが、改めて実感できる。

もちろん、長岡花火の観客輸送には上越新幹線も大きく貢献しているが、東京行きの最終列車が長岡駅発22時01分で、終了後の混雑を考えると要領よく駅に戻らないと乗り遅れることになりかねない。

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新幹線も在来線もこの区間に夜行列車はないので、長岡市かその周辺に泊まるしかなく、しかも宿は早くから満室となる。弾丸ツアーバスは確かに疲れるが、花火見物には貴重な手段であり、だからこそ膨大な貸し切りバスがその需要を支えていると言えよう。

なお、近年は長岡を意識してか、見ごたえのある花火大会が増えている。全国の業者によるデザイン花火が魅力の山形県鶴岡市の赤川花火大会、四尺玉が上がる埼玉県鴻巣市の「こうのす花火大会」なども、長岡と同様に全国規模で注目されるようになった。高速ドライブや高速バスツアーの目的地が花火大会というケースは、今後さらに増えそうな勢いである。

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佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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