生成AI旋風に安心できぬマイクロソフトの正念場 GAFAMきっての「優等生」がドル箱事業で減速

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2023年1月、以前から出資してきたチャットボット「ChatGPT」のOpenAIに、今後数年間で数十億ドル規模を追加出資すると表明。2月には、マイクロソフトが手がける検索エンジンとブラウザにOpenAIの技術をフル活用し、チャットや文章生成の機能を搭載した。

これ以降も、Officeなどの主要アプリケーションにおいて、“Copilot(副操縦士)”と称した月額30ドルのアシスタント機能を発表し、自社のあらゆる製品に生成AIを標準装備させようとしている。

AI関連を含むクラウドサービスへの需要拡大を受け、2023年6月期のデータセンターなどへの設備投資額は319億ドル(約4.46兆円)に膨らんだ。

クラウド時代の寵児として勢いに乗るマイクロソフト。だが、当初はオンプレミス時代の製品群で稼いできたがゆえに、2010年代半ばまではクラウドシフトに出遅れていた。この間、インフラ系のクラウド市場では「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」を擁するアマゾンが1強の座を確立した。

シェア急拡大、アマゾンとしのぎを削る

転機は2014年、ナデラ氏が3代目CEOに就いたことだ。

ナデラCEOは就任後、経営軸を市場拡大が見込まれるクラウドサービスへと転換。アマゾンが得意とするITシステムの基盤領域ではなく、アプリケーション開発のプラットフォーム領域に注力し、サービスのバリエーションを拡充してきた。オンプレ時代にマイクロソフト製品を導入していた企業にとって、アジュールは親和性が高く、スムーズなクラウド移行が可能だ。

調査会社ITRの甲元宏明プリンシパル・アナリストは「革新的なサービスが玉手箱のように飛び出し、スタートアップなどの先進的な企業に強いAWS。対して、見劣りしないサービスのバリエーションまで追い上げ、大企業に強いアジュール。世界共通のクラウド2強としてしのぎを削っている」と解説する。

実際、調査会社Canalysによれば、2018年度末に15%だったマイクロソフトのクラウドインフラサービス市場シェアは、2022年度末には23%まで伸びている。長年にわたり30%超のシェアを堅持するアマゾンの背中が見えてきた。

ただ、ここに来て牽引役のインテリジェント・クラウド事業に不安要素が浮上している。2021年7~9月には前年同期比30%超だった売上高成長率が、直近の4~6月で同15.3%に低下したのだ。

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